「幸せホルモン」
こんにちは。
うさぎや 店主の岩佐です。
暖かな日と冷たい風の日が交互に訪れ、
まさに三寒四温とは今時のことと感じます。
「恩送り」という言葉を聞きました。
「恩返し」ではなく「恩送り」です。
「恩返し」とは「恩」を与えてもらった人に対して
直接「恩」をお返しするものです。
それに対して「恩送り」とは与えてもらった恩を誰か他の人に「送る」こと。
自分がしてもらったことを、
自分もまた別の形で他の誰かにすることで「恩」を送って行く。
この考えに立てば、本来二人の間で完結してしまうはずの恩返しが、
人から人へと繋がって、思いやりが連鎖していきます。
人形浄瑠璃・歌舞伎『菅原伝授手習鑑』に「恩送り」という表現が見られます。
江戸時代では恩送りは普通にあったといわれます。
<Wikipediaより>
思えば私もたくさんの人に、恩をいただいてきたように思います。
しかし、その恩に対してしっかりと恩返し出来た、と思う事はほとんどありません。
中にはもう連絡をとらなくなってしまった人や、
亡くなってしまった人もいますし、
親孝行なんてことを言えば、
気恥ずかしさもあいまってなかなか思うように「恩返し」が出来なかったり
といいますか、両親はもうすでに他界していますが
当時はそれと気付かなかった恩もあるでしょう。
人は、与えられた恩を直接その相手に返せることの方が少ないのではないでしょうか。
いくつもの返せていない恩が、私の胸にひっかかりとなって残っています。
人が人のために何かをする
この行為はとても感動的で何か胸の奥がじんわりと暖かくなるような思いがします。
この「胸が暖かくなる」ような感覚の正体はなんでしょうか。
「オキシトシン」というホルモンがあります。
別名「幸せホルモン」と呼ばれ、その効果には驚くべきものがあります。
幸福感が増す
脳や心が癒されストレスが緩和する
不安や恐怖が減少する
人間関係を円滑にする
学習意欲と記憶力向上
感染症予防
などなど・・・ざっと上げるだけでなんともすごい効果です。
そもそも、このホルモンは母親が子供に授乳をする際に分泌されることが発見されました。
そのとき母親のストレスが緩和され感染症への耐性があがる
という効果があるということがわかったのです。
さらに研究が進み、ある行為によって誰にでもこのオキシトシンが出せることがわかりました。
それが「人のために何かをする」ということだったのです。
あの、何とも言えない胸の奥が暖かくなるような感覚
あれはオキシトシンが分泌されている証拠なんです。
そのとき、人は癒され、ストレスや不安は軽減し幸福感を感じるのです。
「情けは人のためならず」
まさに人のために何かをする、
ということは自分自身をも幸せにする事が出来る行為、ということでしょう。
人間が人間であるということ
この「人のために何かをする」という行為
とくに、まったく知らない他人に対して何かをする、
という行為は人間だけが行う事の出来る特別な行為なのだそうです。
2012年放送のNHKスペシャル
「ヒューマンなぜ人間になれたのか」
<参考 http://www.at-douga.com/?p=11449>
<参考 http://matome.naver.jp/odai/2132727244743406501>
という番組の中で、ある仮説が紹介されています。
約7万4千年前、まだ人類がアフリカにのみ生きていた時代
スマトラ島のトマ火山が激しく噴火しました。
その規模は過去10万年間で最大のものだったといいます。
太陽光は火山灰によって遮られ、
2年間で地球の気温は12度も下がり、
食料を得ることが困難になった人の祖先は絶滅の危機に瀕しました。
わずかに生き残る事が出来た人々は、奪い合うことではなく、
他人と協力する事によって生き残ることができた。
それは「贈り物」を通して行われたのではないか。
装飾品として使われていた黒曜石が、
火山の噴火を境にして、
それまで産地から10キロ圏内でしか出土しなかったものが
70キロも離れた地域でも出土するようになっている。
それまで交流のなかった部族同士が
「贈り物」を通して協力した証拠ではないかと考えられています。
他人と協力しあう、という行為は動物や細菌にも見られる現象だそうですが、
その範囲は、人間で言えば、血縁や特定の所属するグループに限られています。
人間だけが、まったくの他人に対しても協力や思いやりを持つ事が出来た。
そのおかげで生き残ることが出来、さらに世界中へと人類は拡大したのです。
神戸女学院名誉教授の内田樹氏は、
中沢新一氏との対談本「日本の文脈」の中で、
この「贈り物」すなわち「贈与」ということに関してこのように発言しています。
霊長類から分岐して、人類がいちばん最初に獲得した言語は、
おそらく祝福の言葉なんだと思います。
「あなたにはいつまでも存在してほしい」
というメッセージを仲間に向かって繰り返し、
効果的に伝えるような社会制度を、
たぶん人間以外の生物は持っていない。
人間の定義はいろいろありますけれど、
僕は「祝福を贈るもの(homobenedictus)」というのも、
人間の定義の一つに採用してよいんじゃないかと思います。
「恩返し」「恩送り」
それは自分をも幸せにする「オキシトシン」の分泌を促す行為
であると共に人類が、
長い歴史の中で生き残るために獲得した、
人間にだけ乗り越えることの出来た、とても得難い行為なのです
私も、恩送りを心がけたいと思います。
明日、三月一日(火曜日) は通常の 営業日 です。