1年のうちで最も汗をかくこの時季は、水分補給が大切なのはいうまでもない。ところが、水分の取り方を誤ると、さらなる脱水を招いて逆効果に。ナトリウム(塩分)をはじめ、ミネラルの補給も肝心だ。日々の食事からもミネラルをたっぷりと取ることを心掛けたい。
◆汗は体のクーラー
成人の体の約60%は水分で満たされている。何もしなくても、呼気や尿などとともに、1日約2~2・5リットルもの水分が失われている。さらに夏場は多くの汗が加わる。汗をかくのは体から熱を逃がし、体温を下げるため。汗はいわば体のクーラーの役割をしており、暑いときはしっかりと汗をかくことが重要だ。
失った分を補うためにせっかく水を飲んでも、かえって脱水症状になってしまうことがある。
「発汗によって水分とともに、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどミネラルも失われます。血液中のナトリウムが少なくなったところに水分だけ補給し続けると、さらにひどい『生理的脱水』を引き起こします」
稲毛病院(千葉市)健康支援科部長で産業医の佐藤務さんはこう説明する。
◆水を飲んで脱水!?
大量に汗をかいて水ばかり飲むと、血液中のナトリウム濃度が薄まり、低ナトリウム状態に。脳が感知して濃度を上げようと、血液中から水分だけを尿で排出する。血管内が脱水し、濃縮した“ドロドロ血”に。これが生理的脱水と呼ばれ、熱中症だけでなく、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などにもなりやすくなる。
佐藤さんはスポーツをするときや猛暑で大量に汗をかくときには、水分と塩分・糖分を一緒に取れるスポーツドリンクをすすめるとともに、「失われやすいミネラルを食事からしっかりと取っておくのも大切」と説く。
日々の食生活にみそ汁や漬物など、比較的塩分の多い食べ物を取り入れる。朝、昼より夕食後に尿からの塩分排泄(はいせつ)量が増加することや、寝ている間の発汗も含めて、夕食時に多めに取るとよいという。
◆塩昆布を調味料に
医学博士で管理栄養士の本多京子さんは、ミネラル補給に最適な食材として「海藻」を挙げる。
「海藻は海の野菜といわれます。海は地上にある自然のミネラルが雨で流れて集まった『ミネラルの宝庫』です」
海藻を使ったこの時季おすすめのメニューが、水分とミネラルを同時に取れる「くずし豆腐と塩昆布の冷や汁」だ。豆腐にミョウガなどの薬味、塩昆布をのせて冷水や冷茶を注げば出来上がり。火を使わずに簡単に作れ、食欲のない朝でもするすると食べられる。
「塩分とうまみがある塩昆布は、ご飯のお供だけでなく、ミネラルたっぷりのうまみ調味料としても料理に活用できて便利です」
汗をかいた後は、コップ1杯の氷水に塩昆布をひとつまみ加え、“即席すまし汁”にして飲むのもおすすめとか。
作り置きができる「ヒジキとパプリカの和風マリネ」は穏やかな酸味で、ご飯にもパンにも合う。
猛暑では食欲が減退しがちだが、本多さんは「朝ご飯を食べることが大事です。就寝中に汗をかいて、何も食べずに家を飛び出すのは水分不足の第一歩」と指摘する。
「おいしく塩分と栄養を補うのが暑い夏を元気に過ごすコツです」