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「年月が立つに従い御殿では仕えた人等次第に欠ける()」
「結構に造りたまえるお庭など昔ながらも次第に荒れる()」
「手入れする人もないまま青々と軒端の忍草はびこっており()」
「荒れ果てる庭を眺めどなぐさめるよすがにならず持仏の守を()」
「出家さえままならぬのは前世の縁と思い諦めすごす()」
「心では聖になりて後添いをもらう考え微塵もあらず()」
「御念誦のあいまあいまに姫たちの遊び相手をして育てたり()」
「お二人の心映えなどみていれば上は落ちつき下は可愛い()」
「うららかなある春の日に水鳥がつがいで泳ぐは羨ましくも()」
「打ち捨ててつがひ去りにし水鳥のかりのこの世にたちおくれけん(#118)」
「年来の勤行のせい痩せ細りかえって姿が優雅に見えり()」
「姉気味がやおら硯を引き寄せて手習いのごと硯に文字を()」
「『これに書け』硯に文字はいけないと紙を渡せば羞じらいて書く()」
「いかでかく巣立ちけるぞと思ふにもうき水鳥のちぎりをぞ知る(#119)」
「泣く泣くもはね打ちきする君なくばわれぞ巣守になるべかりける(#120)」
「八の宮経を片手に読誦しつ姫君のため唱歌も謡う()」
「二人とも幼いながら合奏をいつもしており面白く弾く()」