10/10
「打ち絶えて過ごしているを恨めしくお思いになりにわかに来たり()」
「このほどのご無沙汰の詫び際限もなく繰り返しおうせられたり()」
「うきながら消えせぬものは身なりけりうらやましきは水の泡かな(拾遺集)」
「成り行きにまかせて素直にしようとてひどく可憐に無邪気にしたり()」
「おん腹も少し膨らみ帯結ぶ風情が哀れ珍しく見る()」
「かわいげに見えだきたれば仄かだが薫るの香り匂ってきたり()」
「訝しみてお咎めになりなんでまた『どうしたことか』とお尋ねになる()」
「人よりはわれこそさきに忘れなめつれなきをしも何か頼まん(古今六帖)」
「こころ憂く身の置き所なく答うべき言葉もなくてだまっていたり()」
「また人に馴れける袖の移り香をわが身にしめて恨みつるかな(#26)」
「見なれぬる中の衣とたのみしをかばかりにてやかけ離れなん(#27)」
「泣かれては言いすぎたかなと反省し愛憎つかさず慰めたまう()」