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「その月の二十日ころには藤壺の裳着行われ君が婿入り()」
「大切にかしづかれたる姫君に臣下のものが添うのはどうか()」
「三日目の夜の儀式は内々もふつうと同じく禄を賜る()」
「婿君は心ならずも通いては少し億劫移すを思う()」
「母宮はひどく喜び寝殿を嫁にゆずると申し出される(女三宮)」
「周囲では皆喜ぶも大将の君はふさぎて宇治を思えり()」
「若君の五十日でのお祝いの品を作るに熱心なりき()」
「宮が留守隙をとらえて伺えり貫禄を増し御逢いになれる()」
「あの頃の戯れごとも忘れたと思えど同じしつこく迫る()」
「こんなにも深い情愛示すのを思いて姉も生きていたらと()」
「大将の君が見たいと赤子のこと乳母に抱かせお披露めされる()」
「好きな人似て真っ白で可愛らし未練ができたか羨ましくあり()」
「なくなった人が妻にて子を残すあらぬ想像いろいろとする()」
「近頃に栄えある縁の姫君に御子を早くと思いもせずに()」
「本当に女々しくひねた性格も他の面では才能あるか()」
「折りつれば袖こそ匂へ梅の花ありとやここに鶯のなく(古今集)」
「鶯も訪ねてきそうないい匂い残して行ったと女房はいう()」