2014/01/09
川上未映子さんの『三月の毛糸』という小説があり、主人公の妊婦が震災当日に地震のことを知らないまま、居眠りをして毛糸で子供を産む夢を見る。子供だけでなく、すべてが毛糸でできている。そんな作品を短歌の形にした。元の歌は
「ある妊婦毛糸でわが児を産む夢をなんでもかでも三月までも()」
というのだが、これだけだとわからないので読者に誤解を与えてしまう。連作にして、全体を表せばと提案されたので、トライしてみた。
うまくいったかわからないが、とりあえず以下の連作ができた。
「あの日から何か変われる不安なり『三月の毛糸』はデジャブであるか()」
「船さえも屋根に登れる不条理は世界が毛糸でできる思いか()」
「夢に見る毛糸の世界は一瞬にほどけてみんな糸になれるか()」
「ある妊婦毛糸でわが子産む夢を見るは予知夢か地震はきたれり()」
「あの日から形を成さぬもの飼えりすべてが毛糸でできる不安を()」
「吉村の『三陸海岸大津波』突き出た足の図が痛ましい()」