いい日和の正午頃
出勤のため、電車に揺られている
節電で、電車内の明かりはついていない
読書をする者にとっては、少々苛立ちを隠せない
何気なく顔を上げ、車内を見回す
どんどん人が吐き出され、どんどん新しい人が乗り込んでくる
乗り込んでくる人の中に、ふらつき気味の人がいた
何やら液体を床にこぼしながら…
隣りにドカッと勢いよく腰を下ろした
ワンカップを片手に持ったオジサンだ
天気のいい昼間からねぇ…
パッションは座席の左端、右隣にオジサンがいるかたちだ
ブツブツ言っている
ワンカップを床に置いて、ポケットをゴソゴソかきまわしている
オジサンの右隣の人に、意味もなくあやまっている
と思ったら、真っ直ぐに向き直り、見えない相手に何か言っている
パッションの左隣に立っている若い男性は
ブツブツとオジサンへの不満を論っている
ブツブツ言うぐらいなら、面と向かって言えばいいものを…
暴れるわけでもなく、殊更にうるさいわけでもない
なので、見て見ぬふりをしていたのだが…
「にいちゃん、ごめんね~」と言ってきた
(オジサンは酔っ払いである)
「ごめんね~」と、何回も繰り返す
とりあえず知らんぷり
「要するにだなぁ、好きか嫌いかってことなんだなぁ」言う事を変えてきた
「好きか嫌いか、はっきり言う事が大事なんだよ」とオジサン
「じゃあ、オレはオジサンのこと嫌いだね」
「そんなことをしているのは、いただけないからね」
口を突いて出た…
まぁ、本心だから仕方ない
「ベリーグッド、ベリーグッド」
と、オジサンはニカッと笑いながら言ってきた
「いんじゃない、いんじゃない」と意味もなく言う
(オジサンは酔っ払いである)
「ま~とにかくさぁ、お互い頑張ろうね」
と、旧知の仲みたいに言いいながら手を差し出してきた
特別断る理由も見当たらないので、その手を握り返す
ゴツゴツとしっかりした手
酷使されて皮膚がガチガチになった手
肉体労働者の手
苦労のにじみ出た手
握手をして間もなく、下車する駅に着いた
駅の改札に向かいながら、自分の手のひらを見つめる
オジサンの皮膚の感触がしっかりと残っている
いろいろあるんだよな
酔わなきゃやってらんないときもあるかもな…
出勤のため、電車に揺られている
節電で、電車内の明かりはついていない
読書をする者にとっては、少々苛立ちを隠せない
何気なく顔を上げ、車内を見回す
どんどん人が吐き出され、どんどん新しい人が乗り込んでくる
乗り込んでくる人の中に、ふらつき気味の人がいた
何やら液体を床にこぼしながら…
隣りにドカッと勢いよく腰を下ろした
ワンカップを片手に持ったオジサンだ
天気のいい昼間からねぇ…
パッションは座席の左端、右隣にオジサンがいるかたちだ
ブツブツ言っている
ワンカップを床に置いて、ポケットをゴソゴソかきまわしている
オジサンの右隣の人に、意味もなくあやまっている
と思ったら、真っ直ぐに向き直り、見えない相手に何か言っている
パッションの左隣に立っている若い男性は
ブツブツとオジサンへの不満を論っている
ブツブツ言うぐらいなら、面と向かって言えばいいものを…
暴れるわけでもなく、殊更にうるさいわけでもない
なので、見て見ぬふりをしていたのだが…
「にいちゃん、ごめんね~」と言ってきた
(オジサンは酔っ払いである)
「ごめんね~」と、何回も繰り返す
とりあえず知らんぷり
「要するにだなぁ、好きか嫌いかってことなんだなぁ」言う事を変えてきた
「好きか嫌いか、はっきり言う事が大事なんだよ」とオジサン
「じゃあ、オレはオジサンのこと嫌いだね」
「そんなことをしているのは、いただけないからね」
口を突いて出た…
まぁ、本心だから仕方ない
「ベリーグッド、ベリーグッド」
と、オジサンはニカッと笑いながら言ってきた
「いんじゃない、いんじゃない」と意味もなく言う
(オジサンは酔っ払いである)
「ま~とにかくさぁ、お互い頑張ろうね」
と、旧知の仲みたいに言いいながら手を差し出してきた
特別断る理由も見当たらないので、その手を握り返す
ゴツゴツとしっかりした手
酷使されて皮膚がガチガチになった手
肉体労働者の手
苦労のにじみ出た手
握手をして間もなく、下車する駅に着いた
駅の改札に向かいながら、自分の手のひらを見つめる
オジサンの皮膚の感触がしっかりと残っている
いろいろあるんだよな
酔わなきゃやってらんないときもあるかもな…