子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」:異型のヒロイン,世界へ

2010年11月17日 21時22分23秒 | 映画(新作レヴュー)
スティーグ・ラーソンが作り上げたリスベット・サランデルという新しいヒロインを巡るサーガの完結編。第1作と比べて第2作のレヴェル・ダウンが著しかったのだが,こうして第3作を観終えた今感じるのは,第2作と第3作はどうやら一つの作品の前後編として作られたのではないかということだ。最初から2作品を通して観れば,第2作は第3作の前段として,それなりに機能していたように思えたかもしれない。
長編を構成する形式として,一見収まりがよいように見える「3部作」方式だが,各作品毎に小さなクライマックスを持たせながら,全体として大きなうねりを感じさせるようにまとめていくことは,なかなか骨の折れる仕事のようだ。

第2作と第3作で扱われたリスベットを軸とする国家的な陰謀については,彼女の出自から幼少期までの出来事を含め,大体の真相が第2作で明らかにされており,本作で新たに明かされる謎というものは殆どない。
しかも肝心のリスベットは,第2作のラストで負った傷が癒えず,法廷においても人間離れした眼力で相手の弁護士と鑑定医を睨みつけるだけで,ラストで兄妹の確執に決着を付けるシーン以外に身体を張った活躍はあてがわれていない。

にも拘わらず,アクションが多かった第2作よりも,ドラマの舞台が法廷となった第3作の方が遙かに躍動的になった理由は,サブ・タイトルの通り彼女を支えるメンバーが実にアクティブかつ魅力的に捉えられているからだ。
第1作からのパートナーで,もう一人の主人公と言っても良い,雑誌ミレニアムの発行責任者ミカエルは勿論だが,今回は彼の妹アニカが弁護士として,大きなお腹を抱えながら八面六臂の活躍を見せる。特に彼女が最後で審理を逆転する決め手となった証拠の綻びが,厚労省の「村木元局長事件」を想起させることから,日本の観客はより大きな喝采をアニカに送るはずだ。
更にリスベットを優しく見守る主治医,陰謀を追いかける公安警察の美しき捜査官,そして第1作からのパートナーであるハッカー仲間と,ヴァラエティに富んだチーム・メイトがこの難しいゲームを組み立てていく様子は,サイドに重きを置き,オーバーラップを多用するサッカーチームのようだった。

とはいえ,この3部作の最大の収穫はやはり,小柄でスレンダーで孤独なヒロインに生命を吹き込んだノオミ・パラスの頑張りだろう。
早くもハリウッドに招かれてビッグ・バジェットの作品に出演することが決まったようだが,同じスウェーデン出身の先輩女優であるイングリット・バーグマンともスカーレット・ヨハンソンとも異なる「攻撃的な」佇まいで攻め続けられれば,結構面白いことになりそうな予感はある。
★★★
(★★★★★が最高)


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