3対0でリードしている展開で,相手がイエロー2枚で一人少なくなるという状況。それが終わってみれば,滝のような脂汗がサポーターの全身を濡らすくらい守備に追われた15分間をどうにか凌ぎ,3対2でようやく勝利を手にすることになるとは,一体誰が想像したであろうか。
出場停止の上里に替わってボランチに入ったのは,シュートは打たないのに何故か監督更には協会幹部の憶えめでたい宮澤だった。しかし監督の慧眼か,後 . . . 本文を読む
トッド・ラングレン「ラント:ザ・バラッド・オブ・トッド・ラングレン」
天才ミュージシャンの呼び声高く,プロデューサーとしても数多くの傑作を残してきたトッド・ラングレンだが,ミュージシャンの間での評価と一般リスナーにおける知名度の落差が,これ程大きいアーティストもそうはいないかもしれない。ひょっとするとアーティストとしてのクリエイティビティーよりも,ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォエバ . . . 本文を読む
黒さを強調したベタなヴォーカルが,ソリッドなファンクビートに乗って気持ち良くうねる。かと思えば,フィルム・ノワールのナレーションのようなクールなラップや,ロナルド・レーガンの演説のコラージュが,隙あらば身体を揺らすリスナーの足を掬おうと待ち構えている。
デトロイトという,ブラック・ミュージックにとっての梁山泊のような街から1981年に突如として現れた,架空のウォズ兄弟を中心とするファンク・ユニット . . . 本文を読む
監督第2作となる「トレインスポッティング」で見せた,映像と音楽の有機的な合体は実に衝撃的だった。ユアン・マクレガーの脱出劇における緊迫感を,アンダーワールドのクールなビートによって巧みに盛り上げたダニー・ボイルの感性は,「グッド・フェローズ」のクライマックスでデレク・アンド・ザ・ドミノスの名曲「レイラ」を使ったマーティン・スコセッシのそれに拮抗するものだった。
その後,そうひどくはないが,優れてい . . . 本文を読む
メロディー・ガルドー「マイ・オンリー・スリル」2009
湿度の高い夜気を纏っていながら,軽やかで瑞々しい声。文章にするとどうにもイメージを結びにくいのだが,若い頃のジャニス・イアンが,超絶技巧を身に着けてジャズを歌う,という表現が最もしっくり来るかもしれない。
輸入盤店で試聴した時,あれよあれよと聴き進め,結局アルバムを丸々全部聴き通してしまった,インディーズからのデビュー・アルバムも衝撃的だっ . . . 本文を読む
試合終了直前まで1対0でリードしていながら,このまま札幌が逃げ切れると確信していたコンサ・サポーターは少なかったのではないだろうか。
中盤を省略して前線に長いボールを入れても,どうにかボールを収めてくれるくさび役は不在。趙や西が身体を入れてボールを奪ってサイドに展開しても,トップと中盤でボールを廻してタメを作ることは出来ずに,すぐに奪い返されてしまう。そんな状況でも後半の45分間を無事にやり過ごす . . . 本文を読む
このところ,サッカー日本代表の人気が急落している,というニュースが喧しい。
岡田監督にオシム前監督のようなカリスマがない,岡田監督の戦術と選手の指向がフィットしていない,中田英寿引退して以降,その後を継ぐような人気選手が出て来ない,選手の入れ替わりが激しく顔が憶えられない,等々,様々な理由が取り沙汰されている。だが私は,日本がこの15年間で急激に成長を遂げた結果の代償として,アジアにおける日本の試 . . . 本文を読む
国際経済(言うまでもなく国内経済も)のことにはとんと疎いため,本作のモデルとなった銀行のスキャンダルについては全く知らなかった。だが武器取引を巡って繰り広げられる,インターポール捜査官の奮闘を描いたこの優れたスリラーを味わうのに,金融に関する知識の備えは全く必要ない。アルフォンソ・キュアロンの傑作SF「トゥモロー・ワールド」の時と同様,あえて負け戦に挑むクライブ・オーウェンの無精髭は,今回もスクリ . . . 本文を読む
「ダウト」に続いて,私の苦手とする舞台劇の映画化作品だ。だが,人間ニクソンの懊悩を繊細かつダイナミックに描いたピーター・モーガンの脚本が,フランク・ランジェラにとって正に「Once In A Lifetime」と呼べるような凄い演技を引き出して,圧倒された。監督のロン・ハワードにとっても,一つの到達点と言えるような成果であり,衰えが囁かれるハリウッドは,稀代の「大物悪役」を実に鮮やかに甦らせること . . . 本文を読む