英米では殊の外評価が高く,賞レースでも目覚ましい成果を上げている作品。
私は「アムステルダム」1作しか読んでいないが,原作者のイアン・マキューアンは数多くの著作が映画化され,過去に自ら脚色も手掛けており,この作品にもある程度コミットしていることは容易に想像できる。
更に監督が,デビュー作にジェーン・オースティンの「プライドと偏見」を選んだジョー・ライトということもあり,結果は予想通り文学の香りが色 . . . 本文を読む
W杯予選を直前に控えて,ここまでいろいろなことにトライするとは思わなかったが,おかげで多くのことが明らかにもなった。
一つはやはり中村俊輔は,日本代表チームに絶対に必要な選手だということ。
二つ目は,松井の活かし方については,チーム全体でもう一度良く話し合うことが必要なこと。
更に今のコンディションのままでは,高原は代表チームのFWとして機能しないということ。
そして最も重要なことは,チームのポテ . . . 本文を読む
中村俊輔と松井という,2010年W杯を目指す上で欠くことの出来ない欧州組2人が加わって,現在やや迷走気味の日本代表がどう変わるのか。注目されたキリンカップの第1戦は,非常に評価の難しい試合となった。ポテンシャルの高さと可能性が,まだ不安定さと等価で存在する,という状態だが,ブレイクしそうな萌芽はあちこちに見られた。総じて見れば,辛くも逃げ切った結果と合わせて,前向きに受け止めて良いのではないだろう . . . 本文を読む
6人の役者がボブ・ディランを演じる作品,だと思っていたら,6人の役者が「ボブ・ディランを想起させる6人の人間」を演じる作品だった。役者達は皆,あたかもボブ・ディランという巨大な構造物の切り紙を縁取る台紙のように振る舞い,出来上がった空洞は,正に原題通り,ボブ・ディランの「得体の知れ無さ」そのものに見えてくる。
後半ではサム・ペキンパーの傑作「ビリー・ザ・キッド21歳の生涯」へのオマージュも滲ませる . . . 本文を読む
基本的には前作「About Time」で掘り当てたブルースの新しい鉱脈を,更に深く,しかもつるはしを使った人力掘削で掘り進んだという印象を受ける,タイトルそのままのソロ9作目。
ジャケットの見てくれ通り,地味で単彩色の世界だが,声の伸びは驚くばかり。何より音楽を楽しんでいる風情に満ちているのが,素晴らしい。
前作の延長とは言っても,今回はギターが大々的にフィーチャーされており,本人の演奏に加えて . . . 本文を読む
殆どのカットに出ずっぱりのダニエル・デイ=ルイスが,渾身の演技で作り上げたダニエル・プレインビューという人物が体現する「欲望」,「偽善」,「憎悪」,そして「生命力」を体感する158分。大地から吹き上げる石油のように観客の頭に降り注ぐのは,「お前は奴に何を見る?」という根源的な問いかけだ。
人間の形をした「欲望」の塊,宗教の欺瞞を憎む実存主義者,家族の絆を渇望する孤独な魂。観る人によって異なるであ . . . 本文を読む
シングルカットされた2曲目の「Always Where I Need To Be」が素晴らしい。
ラフなギターのカッティングで幕を開け,勢いのあるドラムで加速されたビートに乗って繰り広げられる2分42秒のロックンロールには,試聴している最中にヘッドフォンのヴォリュームをぐぐっと上げさせるような力が満ち溢れていた。これは買いだ!と思ったまでは良かったのだが…。
アークティック・モンキーズと同時期に . . . 本文を読む
ダンスフロアに特化すべきタイミングを確実に読み切ると同時に,自らのキャラクターを冷徹に分析し,アバを巧みにダブらせることによって,「Hung Up」を自身最大のヒット曲としてしまった才女マドンナ。
その「Hung Up」を旗艦に抱いたアルバム「Confessions On A Dance Floor」から早3年。R&Bの最前線とも言えるプロダクションを纏った新作も,期待を大幅に上回る傑作だ。
テ . . . 本文を読む
独立系映画の聖地となったサンダンス映画祭を育て上げ,人間と現代社会との軋轢を起点に映画を作ってきたロバート・レッドフォードの監督作。3大スターの共演。対テロ戦争を巡って,立場の違う3者が繰り広げるディスカッション。それにシドニー・ポラック=レッドフォードのコンビが生んだ往年の名作「大いなる勇者」から取ったと思しき邦題。
「大いなる陰謀」は,これだけ揃った関連情報から想像される範囲を,残念ながら一歩 . . . 本文を読む
6年前,初めてドイツに渡った時に,街並みや歴史的遺構などを差し置いて,私を最も驚かせたのは,ホテルの部屋で観た二つの番組だった。
一つは深夜にやっていたスポーツ番組の中の「大相撲ダイジェスト」。星取表は勿論のこと,ちゃんとしたドイツ語の実況と解説付きで上位の取り組みを全て放送していたのだ。アナウンサーが,「若の里」をドイツ語読みで「バカノサト」と発音していたのを聞いて,深夜にひとりで笑い転げたもの . . . 本文を読む