シーズン幕開け時に,「風のガーデン」への期待を込めた感想を書いて以来,忙しさにかまけて他のドラマのレビューをさぼっているうちに,いつの間にかどの作品もが佳境に入る時期となってしまった。駆け足になるが,この辺でチェック中の作品のレビューをまとめておきたい。
視聴率レースでトップを走っている(Audience Rating TV参照)のは,TBS「流星の絆」だ。東野圭吾の原作を宮藤官九郎が脚色し,2 . . . 本文を読む
またしても笑えなかった。
期待していた「ゲット スマート」で裏切られたこともあって,「笑うぞ!」と腹筋に力が入りすぎてはいけない,と戒めて臨んだハリウッド・コメディ秋の陣第2弾,話題の戦争パロディ映画「トロピック・サンダー」だったのだが,中途半端な脚本と何とも生煮えのギャグのせいで,敢えなく返り討ちにあってしまった気分だ。
多分,ベン・スティラーが長年温めていたという構想そのものは,決して悪くは . . . 本文を読む
マサチューセッツ州にある平均年齢80歳の混声合唱団が開くコンサートと,そこに到る7週間の足取りをヴィデオカメラで追いかけたシンプルなドキュメンタリー。それなのに,何がどうしてそうなったのかはいまだに判然としないのだが,ラストのコンサートでソニック・ユースの「SCHIZOPHRENIA」が始まった瞬間に涙腺の堰が崩れ落ち,クレジットが終わるまで涙が止まることはなかった。音楽,映画,そして何より「人間 . . . 本文を読む
メディアミックスによる一大販促キャンペーンの最終章となった映画版「容疑者Xの献身」は,騒々しい宣伝仕立てとそれに見合った興行収入という現象をもって,名実ともに今年のミステリー界の話題と稼ぎをさらってしまった感がある。しかしその内容はと言えば,話題に反比例するような小さな世界に留まる,という決断が功を奏したのか,私の予想を覆すような佳品となった。
少なくとも,さしたる必然性もないままに韓国へと足を伸 . . . 本文を読む
父はリストラ,長男は米軍に入隊,二男は小学校の担任と断絶状態に陥り,給食費を無断で流用して雰囲気が母によく似た先生にピアノを習う。一人で家庭を守る母は,泥棒に拉致され連れて行かれた海岸で,対岸に目には見えない光を見る。
山田太一が1970年代における家庭の崩壊を,連続TVドラマというフォーマットでじっくりと描いた「岸辺のアルバム」を,米国では「Jホラーのゴッドファーザー」と呼ばれる黒沢清が,格差が . . . 本文を読む
メル・ブルックスとバック・ヘンリーが「創作したキャラクターに基づく」というチラシの文句を信じて観に行った私が無知だった。
どうやら大御所のお二人は,1964年から制作されたTVシリーズ「それ行けスマート」に関与しただけで,その2度目の映画化となる本作には,殆ど関わっていないようなのだ。
その結果はと言うと,幾らでも面白くなりそうなキャラクターと仕立てが,残念ながら全く活かされず,劇中で防がれた核爆 . . . 本文を読む
やはり,「本物」に触れる機会という観点から見ると,「東京一極集中」という現実は,厳然としてある,と言わざるを得ない。
念願だったフェルメールを堪能した直後に,その隣にあるコルビュジエ設計の美術館で,「北欧のフェルメール」とも呼ばれているというデンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの作品に浸る,という贅沢は,世界中何処の街でも出来る芸当ではないはずだ。
「フェルメール展」という厳しい闘い(前 . . . 本文を読む
これまで私が美術館に対して持っていた「静かで,上品で,知的な方々が集う場所」というイメージは,たった一度の体験によって音を立てて崩れ去った。
肘や肩をぐいぐいと押しつけられ,足を踏まれ,前に動かざるを得ない状況に追い込まれる一方,私のすぐ前で「何があってもこの場所は譲らん!」とばかりに,両足を踏ん張る女性に睨みつけられながら,もの凄い力で観るものを吸引する絵の秘密を探るべく集中力を全開にする,とい . . . 本文を読む
日本発のベルマーク映画(半券提示で額面の1/100が点数化)は,みんなで観に行きましょう,と頼まれなくても宣伝したくなるような優れた作品だった。
映画の冒頭,先生役の妻夫木聡が6年2組の子供たちと歩いている姿を正面から捉えたショットにおいて,プロの役者である妻夫木が完全に生徒達の中に「埋没」しているのを観た時に,「これはひょっとしたら…」という期待を持ったが,その予感は外れることはなかった。
充分 . . . 本文を読む
Jリーグ発足直後から数々の栄光に輝いてきた鹿島アントラーズは,「関東のチーム」ではあっても首都圏からの時間距離を勘案すれば,ある程度は「地方クラブ」と言えるかもしれない。しかし,住友金属というスポンサーを抱え,ジーコというビッグネームが果たしてきた役割を考えると,チーム発足当初からどちらにも縁がなかった真の「地方クラブ」である大分トリニータ(トリニティ)の今日の勝利は,格別に意義のあるものだったと . . . 本文を読む