子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「2021年の10本」:ドキュメンタリーvs.物語vs.演劇の火花散る闘いを堪能した1年

2021年12月31日 10時31分43秒 | 映画(新作レヴュー)
一般的には大谷翔平の二刀流がメジャーリーグを驚かせた年という印象の強い2021年だが,映画の世界では濱口竜介が昨年のベネチアと合わせて世界三大映画祭を制覇した年として記憶されるに違いない。膨大な量の棒読み会話と演劇的な場面構成の映画的再構築によって世界を魅了した若き才人の成功は,日本の映画人に大きな刺激を与えたはずだ。 演劇との関連という点で言うと,10本に選んだ作品のうち3と4と6は演劇の映画化 . . . 本文を読む

映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」:変身しないマーク・ラファロの底力

2021年12月26日 10時31分54秒 | 映画(新作レヴュー)
世間的にはMARVELの当たり役「ハルク」が何よりの名刺となってきたマーク・ラファロだが,「フォックスキャッチャー」や「スポットライト 世紀のスクープ」など,実際に起こった事件に題材を得た社会派の作品によって,演技巧者としての評価を高めてきたという印象が強い。同様に実際の事件を映画化した「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」で彼が演じる弁護士ロブを「正義派一直線」文科省推薦の単純な2次元的ヒ . . . 本文を読む

映画「ボストン市庁舎」:「ワシントンにはリーダーがいない」と言いきるリーダーが先導する5時間

2021年12月19日 10時14分20秒 | 映画(新作レヴュー)
5時間近い濃密な本編が終わって,シンプルなクレジットが続く背後で,役所にかかってくる電話に応対するオペレーターの声が被さる。「鳩をを狙って舞い降りてきた鷹の目がおかしいんだけど」。思わず吹き出してしまったが,これが「市民の声を聞く」という市役所の姿勢を貫くことによって,もれなくついてくる「現実」なのだ。マーティン・ウォルシュ市長という類い希な指導者が先導するボストン市役所の日常を描いた約5時間の作 . . . 本文を読む

映画「ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド」:フルメタル・ミッキーに幸あれ

2021年12月11日 20時11分08秒 | 映画(新作レヴュー)
1982年の結成から1987年の解散まで,まさに80年代を全力で駆け抜けたという印象が鮮烈なマンチェスターのバンド「ザ・スミス」。中心メンバーだったモリッシーとジョニー・マーは,その後もイギリス音楽シーンに欠くことの出来ない重要人物として,素晴らしい仕事をいくつも残したが,やはり世界中の孤独な若者に与えた影響という点で,ザ・スミス時代の5年間を超えることは叶わなかったと断言できる。スティーヴン・キ . . . 本文を読む

映画「ディア・エヴァン・ハンセン」:ミュージカルとSNSを繋げるという荒技に挑む

2021年12月04日 20時17分38秒 | 映画(新作レヴュー)
ブロードウェイで評判を取り,トニー賞を6部門で受賞した大ヒット作の映画化作品。主役に抜擢された俳優も,舞台で初代の主役を務めた役者を抜擢ということで,「オリジナル」に敬意を払いつつ,映画という新たなステージに挑戦した意欲作だ。「いつでもどこでも突然歌い出すのがお約束」というオープンな形態を持つミュージカルと,一瞬にして世界と繋がってしまう可能性と危険性とを併せ持ちながら,基本は極めてパーソナルなメ . . . 本文を読む