ワイド・スクリーンを活かしたシャープな構図。画面の隅々にまで行き届いた細やかな美意識を引き立てるトレント・レズナー(&アッティカス・ロス)の機械音。凍り付くような冷気を,グレーを基調とした色で鮮やかに表現したジョーダン・クローネンウェスのカメラ。記者,裁判で負けた経営者,探偵,そして父親という複数の顔を持つ主人公ミカエルを,コントロールを利かせたパフォーマンスで演じ切ったダニエル・クレイグ。長尺も . . . 本文を読む
近景の人や事物はすべて実写なのに,遠景の丘や山,高い塔や風車は,C.Gか筆で描かれた絵画という,凝りに凝ったショットが延々と続く。
そのうちに自分がいる場所までもが,ひょっとしたら誰かに描かれた絵の中なのではないか?という錯覚に陥るようなことは当然の如くなかったのだが,極めて不思議な作品であることは間違いない。
ショットが切り替わるたびに,実写はどこまでで,絵はどこからだ?と至る所に視点をずらして . . . 本文を読む
得失点差がゼロで得点差1ながらも優位にいるシリアが,日本の試合の結果を知ってから自分たちの試合に臨めるという状況で,日本にかかったプレッシャーは相当のものがあっただろう。ピッチはでこぼこで柔らかく,ボールはスーパーボールのようにポンポン弾む。五輪出場の可能性を絶たれたにも拘らず,ホームのアドヴァンテージである観客の声援をそれなりに活かして最終ラインを固めるマレーシアに,核となるはずの清武や欧州組を . . . 本文を読む
久しぶりの連ドラ主役となる中井貴一と,映画で新たな中年アイドルの形態を模索中の小泉今日子ががっぷり組んだことで話題になっているフジの木10枠。
アラフォー,アラフィフ世代をターゲットにして,金妻的恋愛ドラマと橋田壽賀子的なホームドラマの中間あたりを狙って岡田惠和が放り込んできたドラマだが,これまでのところ,向井理の「ハングリー!」に1ポイント負け,山Pの「最高の人生の終わり方」に0.4ポイント勝ち . . . 本文を読む
感染すると視覚を失うという疫病に翻弄される人々の姿を描いた「ブラインドネス」は,「シティ・オブ・ゴッド」をものした俊英フェルナンド・メイレレスをして,人がそれまで持っていた感覚(視覚)を失うという事態を,物語として映像化することの困難さを証明するような作品となっていた。
それは,映画というメディアが観客に視覚と聴覚をフルに働かせることを要求するという特性を持つ以上,「奇跡の人」におけるサリバン先生 . . . 本文を読む
何もそんなことまで言わなくても良いのに,とか,いい年して感情と表情がダイレクトにつながり過ぎ,とか,観ていて痛々しくなるような会話場面が全編にてんこ盛り。普通なら爽やかさとは縁遠い感想しか浮かんでこないような作品なのに,悲惨さで塗り固められたようなラストシーンが暗転した瞬間に,何故かメアリー(レスリー・マンヴィル)の困惑した表情から発せられる「それでも生きていく」という一条の光のようなメッセージが . . . 本文を読む
大傑作もない代わりに,外れもない。版権は決して安くはないと思われるが,それでも繰り返し山崎豊子原作のTVドラマが制作されるのは,急速に増えつつある高齢層ドラマ視聴者対応という側面が大きいからだろう。実話に材を取り,愛する者達の,会社の,そして国家の将来を真剣に考え,果敢に行動する男たちの姿は,常に一定の共感と評価を得てきた。某国営放送局の大河ドラマと,現代をフィクションとして描いたドラマの狭間とい . . . 本文を読む
欧州在籍組を招集できず,更に攻撃面での頼みの綱である清武がふくらはぎの故障でチームを離脱するという状況で迎えた天王山。守備面でこのチームの屋台骨を支えてきた山村が故障から復帰したことと,本来はシリアのホームで行われる予定が,シリアの政情不安という理由からヨルダンに会場を移したこと等のプラス材料を考慮しても,苦戦は免れないと思われたが,それにしても前半戦の日本代表はひどかった。
日本のホームゲーム . . . 本文を読む
「バード」に始まり,「ホワイトハンター ブラックハート」「チェンジリング」「インビクタス」等々,好んで実話や実在の人物をモチーフとして取り上げてきたクリント・イーストウッドの新作は,初代FBI長官のJ・エドガー=フーヴァーのクロニクルだった。
半世紀近くに亘って8人の大統領に仕え,現代アメリカの犯罪史を間近で目撃し,時にはその中の「登場人物」のひとりとして活躍してきたアメリカ史の生き証人フーヴァ . . . 本文を読む