ベートーヴェン,バッハ,ワーグナー,フルトヴェングラー,バーンスタイン。指揮者は「作曲家にかしずく存在」と考えるベルリン・フィルの常任指揮者TAR(ケイト・ブランシェット)から見た,クラシック音楽史上にその名を刻んだ巨人たちの姿が次から次へと語られていくうちに,彼らが活躍していた時代も現代と同様に,音楽が社会から隔絶された場所で純粋な「芸術」として存在していたわけでは決してなく,様々な雑音の中で必 . . . 本文を読む
複数のiPhoneのみで撮影したことが話題となった「タンジェリン」,フロリダの陽光の下,懸命に生きるシングル・マザー親娘の苦境を描いた「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」の2作で一躍米インディペンデント界を牽引する存在となったショーン・ベイカー監督の最新作は,社会人としての良心とは無縁のポルノ俳優がドーナツショップで働く17歳の少女と出会って生き直す,という物語では全然なくて,どこまでもしょうも . . . 本文を読む
黒澤明がまだ戦後の空気が濃厚に残る1953年に,三船敏郎と並んで黒澤組の象徴的俳優と言える志村喬を主役に据えて監督した作品「生きる」。日系英国人のノーベル賞作家カズオ・イシグロが物語をほぼそのままロンドンにアダプトさせ,イギリス映画の新作として甦った「生きる LIVING」は,「フェイク1950年代作品」であることを堂々と宣言するかのような冒頭のタイトルからワクワクさせてくれる。陰影の濃いモノクロ . . . 本文を読む