作品賞,監督賞(コーエン兄弟),助演男優賞(ハビエル・バルデム),脚色賞:「ノーカントリー」
主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス),撮影賞(ロバート・エルスウィット):「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
主演女優賞:マリオン・コティヤール「エディット・ピアフ~愛の讃歌」
助演女優賞:ティルダ・スウィントン「フィクサー」
脚本賞:「JUNO」
編集賞,録音賞,音響編集賞:「ボーン・アルティメイタム」
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左目のまばたき以外の自由を失われた主人公が,医師に「ゆっくり休んで下さい」と言われて,心の中で呟く「それ以外に何が出来るんだ?」という台詞が,この気品に満ちた作品の精神を物語っている。
どんな境遇にあっても自分を客観視することを忘れず,自身の不幸をも笑いの対象とする健全な精神の美しさが,脚本,撮影,編集,そして演出の妙技によって,見事に浮き彫りにされ,生きてこの世に在ることの尊さが胸に迫る傑作だ。 . . . 本文を読む
出場選手だけを見ると,各国とも取り組む姿勢に微妙なものを感じる大会ではあったが,まだ日本が一度も取ったことのないタイトルがかかった大一番であることを考えると,もう少し選手の姿勢に必死さがあっても良かったのでは,と感じさせられた試合だった。
試合終了直後のインタビューに応じた岡田監督の,今まで見たことがないくらい不機嫌な応対が,「選手とは一緒に闘った」というコメントとは裏腹に,試合が指揮官にとって相 . . . 本文を読む
劇中に出てくるスノビズムの塊のような映画監督(ウィレム・デフォー)が,カンヌに出品する作品のタイトルが「プレイバック・タイム」。このタイトルを見た映画ファンの中には,ジャック・タチの名作「プレイタイム」を連想してしまった人もいるはずだ。そう,本作はバリバリの英国製にもかかわらず,そのジャック・タチの風刺精神やモダンな絵作りを意識すると同時に敬意を表しつつ,新世紀の「全身喜劇家」=ローワン・アトキン . . . 本文を読む
凄い試合だった。残念ながらレヴェルの話ではなく,ルールが支配するスポーツの試合として成立するかどうかの瀬戸際,という意味での凄さでだが。
ボールが足下を離れた後に来る中国選手の危険なチャージと,それをすべて見逃す北朝鮮人のレフェリー。特に安田を退場させたGKの跳び蹴りは,レッドカード以外の何物でもないだろう。
しかし見方を変えれば,これら度重なる挑発と理不尽を,忍耐と落ち着きと結束で乗り切った日本 . . . 本文を読む
交替で出てきてすぐに縦の突破にトライし,見事起死回生の同点弾につなげた安田理大のハートの強さが全てだった。
どんなに後ろでパスを回しても,常に6人前後がペナルティエリアを取り囲むように守る北朝鮮のディフェンスを崩すには,精巧で速いパスワークか,研ぎすまされたミドルか,セットプレーか,個人の果敢なトライか,このうちのどれかがはまる必要があった。それをやってのけたのは,飛び級でA代表デビューを果たした . . . 本文を読む
「ザ・シンプソンズ」の制作者であるハンガリー生まれのガボア・クスポの映画監督デビュー作は,子供向けのファンタジーを装いながら,感性豊かに生きていくための人生指南書と言える佳作だ。しっかりとしたドラマの骨格,細部まで手抜きのない制作姿勢が,SFXに寄りかかった凡百のお伽噺を遥かに凌駕する成果を生み出している。
上級生による抑圧的ないじめ,同級生の陰湿な差別,サブプライムローン(かどうかは明確ではな . . . 本文を読む
フランスと日本を舞台に描かれたイタリア人作家の原作を,フランス人舞台演出家・映画監督が,英語を主言語として,日本,イタリア,カナダという3カ国の資本で映画化するという,まさに21世紀的国家横断プロジェクト(ちょっとオーバーか)は,一言では形容しがたい味わいを持った歴史ロマンとなって日本に再上陸を果たした。
外国の視点で日本を描いた作品中のマスターピース,とは呼べないかもしれないが,少なくとも湯気に . . . 本文を読む
得点は全て個人技から。流れの中で相手を崩して取った点はなく,失点も喫してしまったが,逆に守備面でワンボランチの宿命とも言える,ヴァイタルゾーンの穴埋めという今後の課題が浮き彫りになったことが収穫と言えるかもしれない。前途は多難だが,時間はある。じっくり付き合って行こうではないか。
新チームの特徴とされていた,スモールフィールドでのパス交換はほとんど皆無。選手同士の距離は,オシム監督時よりも広がっ . . . 本文を読む
黒澤明と三船敏郎。ジョン・フォードとジョン・ウェイン。マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロ等々。映画監督が特定の役者とコンビを組むことによって,朧げなヴィジョンに独自かつ明確な形を与えるよすがとしてきた例は,洋の東西を問わず数多い。
現在の映画界であれば,まず真っ先に名前が挙がるであろうティム・バートンとジョニー・デップのコンビによる新作も,まず配役ありきでプロダクションが進んだことは明白 . . . 本文を読む