ロードショーから時間が経ち,各種の映画賞の発表も終わって,DVDも発売され,公開年における作品の位置付けや相対的な評価も定まった作品に,虚心坦懐に向き合うことはなかなか難しい。ましてやこの作品のように,目につく批評がほぼ絶賛一色に塗りつぶされている場合であればなおさらだ。スクリーンに展開される光と影に没頭する以前に,どこかに穴がないか,という姿勢で目を凝らしてしまいがちだ。
だが始まってすぐ,レ . . . 本文を読む
中東で過ごした1週間の間に,日本代表チームに何が起こったのだろうか。確かにシステムの問題も大きかったが,それだけではあの何とも形容しようのない退屈な試合を説明する事は出来ないだろう。
1993年のW杯最終予選,イラク戦で浴びたヘディングシュートと同様の軌跡を描いた,柔らかなシュートによって締めくくられた一戦は,ある意味ではあの試合以上の衝撃をもたらした。
人とボールが連動して動くという,言うは易 . . . 本文を読む
藤原紀香のプロポーションというのは,やっぱり凄い,とユニクロのハイライズ・ジーンズのTVコマーシャルを見て,改めて思う。足の長さは半端じゃないし,今年37歳になるはずなのだが,全身の見事なバランスは,微塵も衰えを見せない。
だがTVドラマでも,映画でも,もうそのプロポーションを全面に出す形では,主役を張ることが難しい次元に入ってしまったように見える。それは,本人が生粋の芸能人よりも,文化人の血の入 . . . 本文を読む
月光に浮かび上がる車のシルエット。音を立てずに廊下を進む白い靴下。吹き飛ばされるドアの錠。命を懸けて,しかし何気なく宙に向かって弾かれる硬貨。
必要最小限の情報が,微かな音だけを伴い,完璧な構図で画面に立ち現れては消える。それが繰り返され,やがて観客は尋常ではない緊張感にがんじがらめにされていく。
人間の愚かさが紡ぐ物語のダイナミズムに溢れていた「ブラッド・シンプル」と「ファーゴ」を結ぶ線上にある . . . 本文を読む
私の家は,コンサドーレ札幌のホームスタジアムの一つである札幌ドームに近いのだが,昨日家人が外出した時に地下鉄駅付近で,全身を青装束に包み,ドームの下見に来たらしいマリノスサポーターと遭遇したそうだ。考えてみればコンサが最後にJ1で闘ったのは,日韓W杯が行われた2002年。毎年,全国を渡り歩いているコアなサポーターでも,札幌まで来た経験のある人は数少ないのは当たり前の話なのだ。
J1チームのサポータ . . . 本文を読む
ウディ・アレンが掘り当てた「軟弱なインテリ都会人の悩み多き人生」という鉱脈の採掘人に名乗りを上げた,才人ウェス・アンダーソンの最新作。
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」,「ライフ・アクアティック」の2本と同様に,すかした案配も,情けなさの度合いも,しみじみの加減も,じつにしっくりとくる。
世界は小さいが,描きたいものとそのアプローチがくっきりと見えているクリエイターの仕事は,実に心地よい。
これ . . . 本文を読む
CMディレクターから出発し,「エイリアン」で最初のヒットを飛ばして以降,「ブレードランナー」,「ブラック・レイン」,「テルマ&ルイーズ」,そして「グラディエーター」と続く,リドリー・スコットの煌めくようなフィルモグラフィーの中でも,一際輝きを放つ秀作。家族と犯罪と業を同じ地平で捉えながら,社会や国家の枠組みの根底にある欺瞞を突く舌鋒は鋭く,映像的な冒険はエキサイティングで,ベトナム戦争と同時に流れ . . . 本文を読む
出演作はシリアスな歴史物から都会的なコメディまで,役柄も英国女王からインディー・ジョーンズの敵役,果てはボブ・ディランまで何でもござれ。そして,どんな役をやっても,知性と気品がにじみ出る役者としての芯の強さ。
オーストラリア出身のアクトレス,ケイト・ブランシェットがインド人監督シェカール・カプールと再び組んだ新作には,「アビエイター」で本人の役を演じてオスカーを獲得した,あのキャサリン・ヘプバーン . . . 本文を読む