戦闘シーンの臨場感,ということで言うと,これまではスティーヴン・スピルバーグの「プライベート・ライアン」の名が真っ先に挙がっていたと思うが,サム・メンデスの新作「1917 命をかけた伝令」の観客は,そこから「感」という語が抜け落ちた,まさに「臨場」そのものを体験することになる。初めて戦争映画のメガホンを取ったサム・メンデスと今年のアカデミー賞で二度目の撮影賞に輝いたロジャー・ディーキンスの強力なタ . . . 本文を読む
マジンガーZの格納庫を作る。ウェブ上でバズることを目的に始まった,実在する準大手ゼネコン営業部のプロジェクトを再現した,いわば「現在のクリント・イーストウッド路線」とも言える作品。あまり多くはなかった観客の中には,普段は映画を観そうにない中高年の男性の姿もちらほら見受けられた。ひょっとすると映画の中で六角精児が演じた,現場に通じる古手の技術屋もまじっていたのかもしれない。けれどもそんな彼らがこの作 . . . 本文を読む
「選択は人間の特権であると同時に重荷でもある」。
教会において老司教がこう語る冒頭の説教シーンから,ラスト近くに置かれた若い次期司教の感動的な告白まで,緊張が途切れることなくずっと続く。ワイズとマクアダムス,二人のレイチェルという脂の乗り切った芸達者とマクアダムス演じるエスティの夫役アレッサンドロ・ニヴォラが形作るトライアングルは,やがて来るクライマックスに向けて,お互いの距離を詰めつつ体温を高め . . . 本文を読む
2019年第93回(アカデミー賞よりも古いそう)キネマ旬報ベスト10が先頃発表になり,我らが御大クリント・イーストウッド監督作「運び屋」が堂々の第4位に選ばれた。コンスタントに作品を発表し続け,特に最近は現実に起こった事件や実在の人物をモチーフに選び,どこまでもリアリティを追求する姿勢がこのような高い評価を得てきた訳だが,一方でそれらの作品が持つ独特の「硬さ」が,私にはやや敷居の高さに繋がる部分が . . . 本文を読む
気弱でヒトラー・ユーゲントのキャンプでも落ちこぼれてしまった少年が,心の友であるアドルフ・ヒトラーの囁きに勇気付けられて成長していく物語。プロットだけを聞いたら,ナチズムが復活し,反ユダヤ主義が勢力を増しつつある世の中の空気を反映した作品と勘違いしてしまいそうだが,監督はニュージーランド出身で少数民族であるマオリ族の血を引き,ユダヤ民族でもあるタイカ・ワイティティ。話題となった「マイティ・ソー:バ . . . 本文を読む