昨年のキネマ旬報ベストテンで,栄えある外国映画部門の第1位に選ばれた「ゴースト・ライター」は,ロマン・ポランスキーの「物語至上主義」的特質がよく出た傑作だった。リアルかどうかということよりも,次はどうなる?という観客の期待感を煽ることを第一に考え,そのために研ぎ澄まされてきた技と感覚には,一切の衰えが感じられなかった。その冴えは,一幕ものの舞台劇を79分という尺に凝縮した本作「おとなのけんか」にお . . . 本文を読む
モノクロ,トーキーで,主演の男女は世界的にはほぼ無名。おまけに監督はミシェル・アザナヴィシウスという,記憶力の衰え著しい私でなくとも一度聞いたくらいでは覚えられないであろう名前。そんな作品が,今年のアカデミー賞で主要部門を総なめにしてしまった。本命とされていた「ソーシャル・ネットワーク」をダークホースの「英国王のスピーチ」が土壇場でうっちゃった昨年の反省に立った結果,という訳ではないのだろうが,論 . . . 本文を読む
今の監督,今の選手,今の戦術のままでは,間違いなく1年でJ2に陥落する。途中出場のコンサ出身山瀬が決勝点を叩き込んだ瞬間に席を立った多くの観客は,そんな寂しい思いを噛み締めながら帰路についたに違いない。
90分を通じてたった2度しか訪れなかったチャンスを,信じられない事に2度ともモノにするという僥倖に恵まれながら,絵に描いたような逆転劇の引き立て役に回ったコンサの選手たちに,そんな思いは伝わるのだ . . . 本文を読む
後半49分の逆転ゴール。前半にキリノがシミュレーションで2枚目のイエローを貰って退場して以降,試合と言うよりも,ディフェンスとオフェンスに分かれてコートの半分だけを使った練習を見せられていたようなゲームは,無情の結末を迎えた。
特に後半の20分以降は,ピッチの何処でマイボールにしてもまったくボールが収まらなくなり,ひたすら耐える時間が延々と続くうちに,コンサ・サポーターの誰もが「このままで終わる筈 . . . 本文を読む
アメリカ製の連続TVドラマのクオリティーの高さを知ったのは,その昔NHKで放送された「ER」を観た時だった。当時私の身近で話題となっていた「ビバリーヒルズ青春白書」には食指を動かされなかったのだが,群像劇でありながら組織における個人のあり方やコミニケーションの難しさを,簡潔な台詞のやり取りやなにげないエピソードによって浮き彫りにしていく「ER」の手法は,まどろっこしくスピード感に欠けた日本のホーム . . . 本文を読む
マーティン・スコセッシが,子供が主人公のファンタジーを撮ったと知った時,作品のイメージがどうにもうまく像を結ばなかった。3D作品(鑑賞したのは2D)へのチャレンジというのは納得出来たのだが,過去の諸作で人間の本性のひとつと位置付けてきた感の強い「暴力」への強いこだわりを放棄してまで描こうとした題材はいったい何なのか。そんな漠然とした疑問を抱えたまま劇場に行った私は,あまりにも率直でベタな「映画愛」 . . . 本文を読む
本作の主演ミシェル・ウィリアムズについては,子役時代に出演した「スピーシーズ 種の起原」の記憶はまったくないため,後にパートナーとなったヒース・レジャーとの共演作「ブロークバック・マウンテン」が実質的に初めて観た彼女の出演作だったのだが,不安を宿しつつも強く生を希求するような眼差しの引力に一目で魅せられた。
ひたすら暗くて重たかった前作の「ブルー・バレンタイン」の演技によって,一枚看板としても高い . . . 本文を読む
昨年のJ1覇者の柏だが,今年はACLでタイのチームに負け,J1リーグでもここまで既に2敗を喫するなど,本調子にはほど遠い。
今日の試合も,スピード豊かにサイドをえぐるような攻撃や,ボランチから素早く最前線につなぎ,最後は両外国人を中心とした技のショーケースでとどめを刺す,というような場面は見られなかった。
建前から言えば,同じくJ1所属チームである札幌にもつけ込む隙はあったはずなのだが,実際のピッ . . . 本文を読む
これまでの2試合,いずれも勝てる試合を不完全燃焼のまま引き分けに持ち込まれるという結果に甘んじてきた名古屋は,アウェーの天津戦でようやく本来の勝負強さを発揮して勝ち点3を奪った。3点それぞれが技とスピードとパスワークのショーケースと言える見事な得点で,千人という大量の警備員に護られてアウェー側の応援席に陣取った少数のサポーターの溜飲を下げるに十分なものだった。
1点目の藤本のキックフェイントとル . . . 本文を読む
若くて見た目も草食系のスマートなラジオ局員が,ジョギングの途中で腰に違和感を覚えて診察を受けたら,いきなり「進行したガンです」と告げられる。
そんな主人公を,世話焼きの友人,過保護な母親,新米セラピストたちが励ましながら,辛く苦しいガン治療が進められる。
物語の筋だけを取り出したら「ガン闘病記」というこれまで数多く作られてきたジャンル作なのだが,ジョナサン・レヴィンの「50/50」は,そこに小洒落 . . . 本文を読む