冒頭いきなりスクリーンに,脂肪の塊をまとった中年女性が裸で踊る姿が映し出される。次々と現れる女は皆,観客に向けて,単なる自己顕示とも嘲笑とも誘惑とも取れる不敵な笑みを見せながら,脂肪を激しく上下に揺さぶり続ける。やがてそれは主人公スーザン(エイミー・アダムス)が開いた個展におけるインスタレーションの一部だと判明するのだが,このタイトルバックだけで観客は不穏な緊張感にがんじがらめにされる。
グッチの . . . 本文を読む
今の映画界で,SFX大作やアニメーション以外で,コンスタントに「この監督ならでは」というオリジナリティ溢れる作品を作り続けるというのは大変な偉業だ。どんなに映画祭で高い評価を得ようとも,市場価値という,見ようによっては芸術的評価よりもシビアな基準を常に満たしつつ,独自の映像表現を保っている映画監督は世界中を見渡してもそう多くない。テーマを声高に主張することはなくとも,落ち着いた画面構成と俳優たちの . . . 本文を読む
若い白人女性ローズ(アリソン・ウィリアムズ)が恋人(ダニエル・カルーヤ)を連れて実家に里帰りする。ごく普通のホームドラマにありがちな導入部だが,その恋人が「ネイティブ・アフリカン」であること。加えて,その事実を彼女が事前に両親には伝えていなかったにも拘わらず,両親は驚いた風もなく彼を迎え入れる。更に両親が開いたパーティーでは,一人を除いて白人ばかりの隣人たちが,冷たい作り笑顔で彼らに接する。こんな . . . 本文を読む
古沢良太。一般には「相棒」や「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズで知られるライターだが,私にとっては「リーガル・ハイ!」「鈴木先生」そして「デート〜恋とはどんなものかしら〜」という,いずれも日本のテレビドラマではお目にかかることがなかった革新的な主人公を生み出した「クリエイター」としての仕事が印象深い脚本家だ。そんな彼が「リーガル・ハイ」でコンビを組んだ演出家石川淳一と手を組んでオリジナル脚本によ . . . 本文を読む
日本にもいるのかどうかは知らないが,アメリカの議会においては常に法案成立を左右する存在といわれるロビイスト。そんな危うくも,やり甲斐MAXの職業を,地味なのか派手なのか,美人なのかそうでないのか良く分からないが,出演作にほとんど駄作がない(「ツリー・オブ・ライフ」だけは微妙…)という一点にかけては右に出るものなしのジェシカ・チャスティンが演じるとこうなるだろう,という意味では期待通り。
ただキャリ . . . 本文を読む
シャーリーズ・セロンが,まるで「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で帯びた熱がまだ冷めやらないかのような形相で男たちに立ち向かい,渾身の力で殴り続ける。彼女に打ちのめされる男たちも,文字通り命を賭した懸命なアクションで,彼女の怒りを受け止める。階段の踊り場で殴られた男がそのまま真っ直ぐ後ろに倒れるカットがC.Gでないとすれば,もはや人間業とは思えない偉業に驚く。
フライヤーには「スタイリッシュ・ . . . 本文を読む