私にとって,ザ・バンドとスティーリー・ダンに続く,3番目の,そしてイギリスのバンドとしては初となる,「理屈も屁もなく感服しましたバンド」の座に鎮座したのが,このXTCだった。
パンク勃興期に,アンディ・パートリッジがかき鳴らすギターと,バリー・アンドリュースがシンセサイザーから捻り出した歪んだビートで,シーンの端っこに居場所を見つけた4人組は,バリー・アンドリュースに替わってデイブ・グレゴリーが加 . . . 本文を読む
ティムール・ベクマンベトフ。「マトリックス」が拓いたブレットタイム撮影による映像表現を進化させ,独特のスピード感と浮遊感を持ったハイスピードショット(スローモーション)を,物語を語るための必然の技として確立させた手腕は,驚くべきものだ。ロシアの中央アジア系の名前らしく,ちょっと覚えづらいが,ハリウッド・デビューでこんなにもシャープで力強い作品をものにした監督として,覚えておかなくては。
予告編や . . . 本文を読む
脚本,撮影,美術,演技,音楽,そして演出。映画を形作る様々な要素が,「ひたすら面白い映画を作る」という崇高な目的に向かって,緊密な連携の下で驀進している。作品から伝わってくるスタッフやキャストの迫力たるや,制作費の桁が二つ違うのではないかと思われる「ダークナイト」に匹敵するほどだ。
アンチヒーローものを突き詰めていった果てに生まれた魅力的なヒーローが,イギリスの長閑な田舎の真ん中で,お世辞にも美し . . . 本文を読む
私が映画を見始めた時には,もう既に「世界のクロサワ」という名声を確固たるものとしていて,リアルタイムの印象で言うと,独立騒動や「トラ・トラ・トラ」事件,その他諸々の「映画以外の出来事」のインパクトの方が強かった黒澤明だが,幸運にも1980年作「影武者」以降の作品は,全て公開時に劇場で観ることができた。
しかし,スピルバーグやルーカスなどの後押しを受けて,制作資金の調達という長年の課題をもクリアしな . . . 本文を読む
夏シーズンは正直「何だかなぁ」という感じのまま,盛り上がりを見せることなく終わってしまった。
「ゴンゾウ」と「四つの嘘」を並べたテレビ朝日勢が多少頑張りを見せた他は,出足良くスタートを切った番組でも,結果的には暑さに負けて勢いを失ってしまったような印象が強い。
「モンスター・ペアレント」は,米倉涼子が日本のTVドラマ界では珍しく,熱くならない弁護士役を途中までは楽しそうに演じていたのだが,お決ま . . . 本文を読む
ブライアン・ウィルソンの新しいアルバムが素晴らしい。古い流行歌をモチーフにして,そこから湧き出たインスピレーションを紡いだ物語は,傑作「スマイル」とはまた違った豊穣さを湛えて,聴く度に違った表情で魅了する。メロディとコーラスワークの美しさもさることながら,音楽を創り出す歓びが漲っている声の力は,正に奇跡と呼んでも良いくらいだ。
なので,もう少しそのアルバム「That Lucky Old Sun」に . . . 本文を読む