私は京極夏彦の小説を読んだことはないので,小説の出来と比べた論評は出来ないが,豪華なキャストで銀幕に展開された江戸川乱歩新世紀バージョンという趣の本作は,物語の外郭に注がれたエネルギーが肝心のお話に到達する前に枯渇してしまい,正に中身が消えた筺の如き感触だけが残る結果となった。これをお正月映画として売るという仕事は,人間の身体を再生させることや,バラバラ殺人事件の真犯人を推理することよりも至難の業 . . . 本文を読む
音楽に続いて,今年劇場で観て感銘を受けた外国映画10本を選んでみました。
音楽の時と同様に,順番は付けていません。
1 「ディパーテッド」マーティン・スコセッシ
2 「クイーン」スティーブン・フリアーズ
3 「ボラット 栄光なる国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」ラリー・チャールズ
4 「ゾディアック」デヴィッド・フィンチャー
5 「リトル・チルドレン」トッド・フィールド
6 「ボルベール . . . 本文を読む
1960年生まれのデンマーク人,スサンネ・ビアは,周到に構築された脚本と練達の演技,そして独自のリズム感に満ちた編集術によって,骨太の人間ドラマを作り上げた。北欧の透明な空気と生きている人間の熱い血がせめぎ合うような空間は,実に魅力的で,119分間はあっという間に過ぎていった。
インドの孤児院で働くデンマーク人の男が,施設の金策に追われ,やむなく母国の実業家に援助を求めるために帰国する。男と直接 . . . 本文を読む
クリスマス・バーゲンに合わせた,音楽雑誌の「今年のベストアルバム」企画が百花繚乱,という季節がやってきました。選ばれているアルバムは,雑誌によってかなり傾向が異なりますが,気になっていて結局買わなかったアルバムが選ばれていると,やっぱり聴いてみようかな,という気になります。
で,聴いてみて気に入ったものに出会えると,見逃さなくて良かったぁ,という小さな幸せを感じる年の瀬,という訳で,まっこと,たわ . . . 本文を読む
地方への分配税制度に関して「泣く子と地頭と政府には勝てぬ」と語った何処かの都知事ではないが,ものの見事に「泣く子」に泣かされてしまった前作に続いて,またもや不覚にも落涙してしまった。ノスタルジーという枠組みの留保があったとしても,ここまで丁寧な映画づくりが今後も続けられるのだとすれば,とことん付き合っていこうと思わされる出来だ。
続編の弊害に陥らない筋立て,と評論家筋にも好評のようだが,前作に比 . . . 本文を読む
10日間にわたる大会が幕を閉じた。これまでになく実のある10日間だったと思う。3位決定戦という通常であれば余録と思われている試合が終わった瞬間,両チームに号泣する選手がいたことが,大会の空気を物語っていた。アジアのチームが初めて3位になったことも,ACミランが17年振りにクラブNO.1になったことも含めて,大会のパッケ-ジに中身が伴うようになった,と言えるのではないだろうか。
浦和は非常によく頑 . . . 本文を読む
ジャ・ジャンクーの新作「長江哀歌」を観ようと思って劇場まで行ったのに,窓口で,前売り券を挟んでおいたシステム手帳を家に忘れてきたことに気付く。折角,地下鉄賃を使って街中まで出てきたのにこのまま手ぶらでは帰れないと,歩いて20分の距離にあるシネコンまで行き,最も早く観られる映画を選んだら,この「ずるずる(ぐちょぐちょ)と滑る(原題の邦訳)」になった。
いい加減な出会いの結果は,題名そのものずばりの気 . . . 本文を読む
ようやくアジアでNO.1の座を勝ち取ったJリーグのクラブが,世界的に見た時に,どの辺りに立っているのかを推し量るためには,またとない貴重な機会だったが,結果は予想以上に厳しいものだった。うなだれながら「良い経験だった」と語る阿部の顔に浮かんでいたのは,「衝撃」そのものだった。
攻撃に転じた時のスピードの切り替え,トラップの正確さ,動き出しを見極めて出すパスのタイミング,どれを取ってもレヴェルが違 . . . 本文を読む
得点は取ったが,前半のボカの出来はひどかった。選手は時差ボケの割には動けていたようだが,とにかく簡単な繋ぎのパスにミスが頻出し,攻撃の組み立てが出来ない。ボールと選手の動きに常にズレがあり,連動してボールを奪えないために,ファウルになるアフターチャージでしか相手のカウンターを止められない。
もしも後半もあのままの調子だったら,母国アルゼンチンからチャーター機を仕立ててやって来た2,000人のサポー . . . 本文を読む
絶対的な優位を活かせずに2連覇を逸した上に,ポンテと田中達也が怪我で離脱。念願だった世界クラブW杯出場を前に,悲観的な材料ばかりが喧伝されながら,蓋を開けてみれば今季初とも言える,人もボールも動くサッカーを展開して,アジアCL決勝で完全に試合を支配されたセパハンを圧倒して,浦和が準決勝に駒を進めた。
私の予想は嬉しい方に外れてしまったが,外れて良かった,よかった。
鍵はポンテの欠場と左サイドに入 . . . 本文を読む