出身地である南アフリカの人種差別を,SFのフォーマットで描いた「第9地区」で鮮烈なメジャー・デビューを果たしたニール・ブロムカンプ監督の新作は,マット・デイモン,ジョディ・フォスターという大看板を揃えた大作だ。
荒廃が進み貧困層が住む地球に,どんな病気をも治療する再生装置を備えた「エリジウム」と呼ばれるスペース・コロニーを対置し,アクションを主軸に据えながら貧富の格差を「第9地区」と同様に差別の問 . . . 本文を読む
若い移民層が高齢化を食い止める傾向にあると言われているアメリカにおいても,やはり熟年人生の充実は大きな課題となっているようだ。
アニメとコメディとSFXものの寡占状態となっているハリウッド産のヒット作群に,倦怠期に入った熟年夫婦の新規まき直しドラマが割って入る隙間は存在するはず,と考えた制作陣が,大御所二人を起用した本作は,結果的に興収1億ドルを超えるヒット作となった。ここ日本でも着実に中高年齢層 . . . 本文を読む
結果的に世評に異を唱えることになってしまうケースが多いのだが,J.J.エイブラムス作品とは,どうにも相性が悪い。派手なSFXに彩られた華麗な映像テクニックが,物語の流れを加速する方向ではなく,単独で自己(映像)の存在を主張するためだけのように使われていると感じられる時間帯が長い,という印象が強いのだ。
そんなエイブラムス作品の中でも「スタートレック」のリブート・シリーズの第1作だけは,珍しく映像と . . . 本文を読む
タイトルと,予告編から想像する限り,ここまで「ふつうのゾンビ映画」なのだとは思わなかった。
にも拘わらず,ブラッド・ピット主演映画としての興行収入は,過去最高を記録する見込みだという。
確かに,エルサレムに築かれた巨大な壁をゾンビたちが「棒倒し」の要領によって乗り越えてくるショットは実に迫力があるが,それにしてもこの内容で「世界大戦」は,いくら何でも言い過ぎだ,と突っ込む人はそれ程多くはなかったよ . . . 本文を読む
独特な絵づくりから「高尚な芸術品」という印象が強く,世評の高さを実感できなかったキム・ギドク監督作品だが,昨年のヴェネチア国際映画祭で戴冠した「嘆きのピエタ」は,明らかにこれまでの作品とは一線を画す「物語の力」で見せるパワフルな復讐劇だった。
「息もできない」と「オールド・ボーイ」という,韓国映画界の底力を示すふたつの傑作を合わせたようなストーリーは,まさしく「息もつかせぬ」緊迫感に満ちている。冒 . . . 本文を読む
「もののけ姫」完成時あたりから「これが最後と思って作った」という心情の吐露が続いていたので,宮崎駿の引退宣言のニュースを聞いても驚くことはなかった。
長編からは引退,という言葉から,短編制作の可能性を読み取る向きもあるらしいが,仮にそれが実現したとしても「宮崎駿」という巨大なジャンルを深化させるような,果敢な試みに接することはもうないと思うと,やはり寂しい。
最後の長編作品となった「風立ちぬ」が予 . . . 本文を読む
ロスタイムに入ってからの岡山のCKの直前,同行者が「これまでの札幌だったら,ここでやられていたんだよな」と呟いたのだったが,「今の札幌」は残念ながらやっぱり「これまでの札幌」のままだった。
その一つ前のCKで素晴らしいパンチングを披露した以外は,そのほとんどをミスしていたキックに代表されるように,不安定なプレーが目立っていたGKの杉山は,最後に致命的な判断ミスを犯した。
ほとんどフリーになっていた . . . 本文を読む