トッド・ヘインズと言えば,代表作である「エデンより彼方に」も「キャロル」も,1950年代のメロドラマを想起させるような独特の色彩設計が,作品世界を貫く背骨のような存在として機能していたという印象が強い。ジュリアン・ムーアの孤独も,ルーニー・マーラのときめきも,画面を彩る「明るいのに落ち着いた」ヘインズ調の色彩がなければ,あそこまで鮮やかに浮き彫りになることはなかったはず。
だがヘインズは新作「ワン . . . 本文を読む
以前にも書いたが,MARVELものが苦手だ。単純な勧善懲悪一直線のヒーロー礼賛型も,悩めるヒーローの暗黒面クローズアップ型も,どちらも週末の気分転換としての効能は,私にとっては高いとは言えない。決してアクションものが嫌いという訳ではないのだが,どうせ観るなら最後まで主人公のミッションの成否や生死が分からないサスペンスで翻弄し続けて欲しい,というのがささやかな希望だ。その点でどんな作品でも続編ありき . . . 本文を読む
本作と同じく,三浦大輔が自作の戯曲を映画化した「愛の渦」は,裏風俗店に集った初対面の男女10名が,気に入った相手に対してどうやってセックスのきっかけを見つけ,相手に迫るかを競い合う際にこぼれ出る本音が刺激的な,セックスそのものを描いた官能ドラマと言うより,服を着ない役者による会話劇と呼ぶべき作品だった。導入部などは,志を同じくする,という点では共通点のある「ワークショップ」の参考書にしたら良いので . . . 本文を読む
ウォーターゲート事件が起こる直前,過去4代に亘って政権がひた隠しにしてきた,ヴェトナム戦争の実態を調査した報告書がニューヨーク・タイムズに掲載されるという事件が起きる。直ちにニクソン政権は差し止め訴訟を起こし,出版停止命令が出されるが,今度はワシントン・ポストがその文書の掲載をするかどうかという,社運のかかった重大な判断を迫られることになる。そんな事件の顛末を描いたスピルバーグの新作「ペンタゴン・ . . . 本文を読む
東京でいじめに遭い,離れて暮らす父の元へとやって来たヒロイン糸真(しま,黒島結菜)が,ようやくのことで仲良くなった女子グループと街中で待ち合わせるシーンがある。場所は三越百貨店1階のライオン像の横。結局友達はひとりも約束の時間にはやって来ず,糸真はしばらく待たされた挙げ句に携帯電話も繋がらなかったことで,ようやくハブられた(のけ者にされた)ことを知る。友達と待ち合わせる,という行為自体が何年も前に . . . 本文を読む