子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に」:素晴らしき野球バカたちの世界

2016年12月31日 10時51分02秒 | 映画(新作レヴュー)
「6歳のボクが,大人になるまで。」で,とうとう表舞台で眩いばかりのスポットライトを浴びることとなったリチャード・リンクレーターが次作に選んだのは,「チンコ」という単語が50回くらい連呼される,折り紙付きのバカな若者の生態を描くことだった。リンクレイターが精魂込めて描いた3日間のどんちゃん騒ぎは,映画史に残るくだらなさと,同量の切なさを内包した,まれに見る青春映画の傑作として昇華した。 主人公ジェ . . . 本文を読む

映画「この世界の片隅に」:「暮らしの手帖」と「火垂るの墓」の幸せな融合

2016年12月25日 23時05分57秒 | 映画(新作レヴュー)
ジブリが活動を停止した後も「アニメ大国」と言われ,コアなファンが興行的にも映画の内容面でも邦画を牽引する存在だという言説を聞いても,門外漢の私にはピンとこなかった。 その受け止めは2016年最大のヒットなった「君の名は。」を,若い人の熱気が充満する劇場で観ても,夏から始まって正月まで続く200億円を越える興行の状況を聞いても,やはり大きく変わることはなかった。 しかし本作「この世界の片隅に」を観て . . . 本文を読む

映画「世界の果てまでヒャッハー!」:ナマケモノ万歳!

2016年12月17日 13時08分53秒 | 映画(新作レヴュー)
映画の原点のひとつに,バスター・キートンの奇跡のような傑作群に代表される「身体を張って笑いを取る」というコメディがあることに異論を唱える人はそう多くないだろう。エスプリに満ちた知的な笑いを得意とするフランス映画界が,一方で下品な下ネタを交えつつ,そんな先祖返りに挑んだ「世界の果てまでヒャッハー!」のような作品を送り出してきたことに心から拍手を送りたい。 婚約者の父親に会うためブラジルに渡った主人 . . . 本文を読む

映画「永い言い訳」:死が呼び覚ます生の重み

2016年12月11日 11時47分51秒 | 映画(新作レヴュー)
「SCOOP!」に主演していた福山雅治とはカテゴリーが異なるながらも,若い女性への訴求度という点ではひけを取らない人気を誇っていたアイドル出身の本木雅弘は,福山雅治よりも遥かに早くから「演技」というルートにシフトして,着実にキャリアを積み上げてきた。「SCOOP!」と本作を並べてみると,主演男優の経験と覚悟の違いが作品自体の質を左右する,という厳然たる事実が明確に示されている,という思いを抱かずに . . . 本文を読む

映画「ティエリー・トグルドーの憂鬱」:矜持を保って生き抜く覚悟

2016年12月03日 13時43分50秒 | 映画(新作レヴュー)
極端に少ない台詞。動かないカメラ。対象を見つめる静かな視線。92分に凝縮された濃密な時間。一見すると21世紀にロベール・ブレッソンが甦ったかのように見える作品だ。 だが決定的に異なる点がある。ブレッソン作品では一部の例外を除いて,主要な登場人物に素人や無名の役者を多く配することにより,観客の既視感や先入観を排除して匿名性を普遍性に昇華させていたのに対し,本作の監督であるステファヌ・ブリゼは,ヴァン . . . 本文を読む