防弾チョッキを着せられた11歳の女の子が,父親(ニコラス・ケイジ)から銃で撃たれる訓練を施され,最後は殺人マシーンと化して,次から次へと悪人を薙ぎ倒す。時にかなりリアルな描写を観ながら,あり得ない話ではあるけれども,もし青少年健全育成条例を改定したばかりの東京都知事がこの作品を観たら何と言うだろうか?ということを考えていた。コミック特有の誇張された表現を,映画独自の描写へと移植する技術と表現に関す . . . 本文を読む
充実作が多かった今期のドラマだが,どれか1作となると,私は曲者脚本家ユニット「木皿泉」入魂の青春ドラマ「Q10」を挙げたい。
開始直後には「キュートを狂言廻しに使った青春群像ドラマ」と紹介したのだが,回が進んで物語が佳境に入るに従って,平太(佐藤健)とキュート(前田敦子)の運命的な恋を全面に押し出すことで,逆に背景の人間模様が鮮やかになっていく様子は,技巧を超えた上手さを感じさせて見事だった。
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楽屋からステージに向かってゆっくりと歩いてくるデヴィッド・バーンのスニーカーを捉えたオープニングから,文字通りステージが燃え上がるような熱狂のエンディングまで,練りに練り上げられた演出が間断なく続くグルーブを余すところなく捉えた,奇跡のようなフィルム。一般にはアカデミー賞を総なめにした「羊たちの沈黙」の監督として知られているジョナサン・デミだが,デヴィッド・バーンの才気に誘発され,鋭い映像センスが . . . 本文を読む
村上春樹は広く海外に及ぶその絶大な人気から見れば,著作の中で映画化された作品は非常に少ない作家だと言っても良いと思う。すぐに思い出せるのは大森一樹の「風の歌を聴け」と市川準による「トニー滝谷」くらいだったのだが,ここへ来て主役にキルステン・ダンストを迎えたショート・ムービー「パン屋再襲撃」,そしてナスターシャ・キンスキーの娘ソニアが出演している「神の子供たちはみな踊る」と,海外で映画化された作品の . . . 本文を読む
台詞は殆どなし。ワンショットで撮られているシーンが多く,キャメラの動きは極めて限定的。二人のダンス・シークエンス以外,音楽が映像をリードすることもない。
にも拘わらず,全体を俯瞰した時に動的な印象を受けるのは,飛躍する物語と主役二人のユニークな動きと雰囲気のせいだ。
共同で監督し,主役も務めている共に長身痩躯のドミニク・アベル&フィオナ・ゴードンは,無駄に激しく,時に「流麗な痙攣」のようにも見える . . . 本文を読む
来年1月7日から,結果的にはW杯のシミュレーションのような形になってしまうのが癪ではあるが,カタールで行われるアジアカップに向けた予備登録メンバーが,一昨日発表になった。最終的には23人に絞り込まれるが,現段階での候補者は50名。天皇杯の決勝まで進んだチームの選手を入れるかどうかで様々な意見が出ているようだが,予備登録メンバーはJ1のチーム及び海外在籍の選手から広く選ばれている。特に札幌のサポータ . . . 本文を読む
前作「The BQE」で大胆な「電子化」を図ったスフィアン・スティーヴンスの新作は,躍動感に溢れ立体的な音像が際立つ傑作だ。「ミシガン」,「イリノイ」と立て続けに「お遍路さんアルバム」を発表したことから,各州をコンセプトにしたアルバムで全米50州を網羅するプロジェクトを進行中,という報道が流れたが(実際にはガセネタだったらしい),そんなプロジェクトなど必要としないスケールの大きさには驚かされるばか . . . 本文を読む
初期にはバンド内の音楽教師としてメンバーを鍛え上げ,キーボードから各種の管楽器まで様々な楽器を操り,音楽監督のような立場でザ・バンドの偉大な歴史に足跡を刻んだガース・ハドソンが,カナダ人のアーティストを起用してまとめたザ・バンドのトリビュート盤。トリビュートされるバンドのメンバーが音頭を取っているものを,果たして「トリビュート盤」と形容して良いのかどうかは分からないが,これまで私にとってはまるで縁 . . . 本文を読む