人を寄せ付けない冷たい海。舗装されていない道を吹き渡る風。海沿いに立つ白壁の家。魚の臭いが漂う倉庫と工場。ありとあらゆる風景が「殺伐」という単語を想起させる一方で,ショットの温度が下がれば下がるほど,そこに生きる若い女性マリーの身体を流れる血液の熱が観客に伝わってくる。
これが監督としてのデビュー作だというヨナス・アレクサンダー・アーンビーは,これまで美術アシスタントとして就いてきたラース・フォン . . . 本文を読む
試合が始まってしばらくは「これこそが本来J1で戦うべきチーム」なのだろうと,半ば呆気にとられながら,ひたすらセレッソのパス廻しを見せつけられる展開だった。選手間の距離が近く,コンパクトな陣形を保ちながらスピーディーにピッチ上を動き回られる中,札幌はまるでカテゴリーがひとつ上のチームと無理矢理対戦させられたユースチームのように,常に一歩遅れてボールを追いかけるという状態だった。
しかしサッカーにおけ . . . 本文を読む
2013年のクリスマスシーズンに,クリスマスに集まった大家族の喧噪からちょっと距離を置いて,彼らの様子を見ていた思春期の男の子が,パーティーの終わりに自分が撮ったヴィデオをみんなに見せて,輪に入らない彼を心配していた母親やおばあちゃんたちの涙を誘うというiPhoneのコマーシャルがあった。
ベタとスタイリッシュの境界をうまくついた,いかにもアップルらしいオチのコマーシャルだったが,バックに流れるキ . . . 本文を読む
モンティ・パイソンと聞いて真っ先に思い浮かべるスタッフの名前は,テリー・ギリアムと本作の監督であるテリー・ジョーンズだ。評判を呼んだテレビ番組終了後に,ギリアムがパイソンで培った諧謔趣味を最大限に活かして「未来世紀ブラジル」という,映画史に燦然と輝く金字塔を打ち立てたのに対して,純然たるコメディ路線に残って仕事を続けたジョーンズに対する世評は,残念ながらギリアムに対するもの程高くはなかったというの . . . 本文を読む
札幌にとっては,まさにサッカーに負けて勝負に勝った試合だった。
遠路はるばるきびだんごの里から来て,寒風吹きすさぶ中を地下鉄までとぼとぼと歩いて帰ったであろう岡山サポーターの皆さんには,心からの感謝とお詫びを申し上げたい。サッカーの質では遥かに凌駕していた岡山が手にするべきだった勝ち点を掴み損ねた悔しさは,察するに余りある。
ただあのサッカーをシーズンの最終盤まで続けていければ,岡山が今年のJ2 . . . 本文を読む
若い俳優で埋め尽くされる恋愛映画とアニメーションが常に興行収入の上位を独占するこの国にあって,派手なSFXが使われず,スーパーヒーローも出て来ない,極めて地味なヨーロッパの映画が公開される確率は,LOTO6の当選確率とどっこいどっこいなのではないかという気がしている。ニッチ文化が唯一生き残れる場所,東京にあってさえミニシアターがどんどん潰れていくご時世とあっては,イタリアの名匠ナンニ・モレッティの . . . 本文を読む