勝たなければJ1昇格の可能性がほぼ絶たれるという試合だったが,札幌は意地もプライドも根性も見せることなく,降格争いの只中にいる讃岐を倒すことが叶わずにシーズンを終えた。
試合終了後の選手による挨拶の際,ホーム側ゴール裏に陣取ったサポーターたちは不満と怒りと情けなさを沈黙で表して,彼らの不甲斐なさに抗議した。
シーズンの集大成としてはあまりにも寂しい内容の試合だったが,今の札幌を象徴するという意味で . . . 本文を読む
四半世紀前にベストセラーとなったアゴタ・クリストフの原作は,出版直後にすべて読んでいたのだが,細かなエピソードはほとんど忘れていた。おかげで三部作の第一作を原作者の母国であるハンガリーのヤーノシュ・サースが監督した「悪童日記」は,まったくのオリジナルな物語として楽しむことが出来たのだが,これも今はなき赤瀬川原平翁曰くの「老人力」がついてきた証拠なのだろう。
ほとんど忘れていた原作の中でも,辛うじ . . . 本文を読む
数多いジョン・ル=カレの小説の映画化作品の中でも,トーマス・アルフレッドソンの「裏切りのサーカス」はとりわけ高い世評を得たようだが,個人的には台詞の一つも疎かに出来ない,あまりにも複雑巧緻な作りに疲れてしまい,裏切り者が判明した後の余韻にひたることが叶わなかったという記憶の方が強い。
その点,ロックミュージシャンのポートレイトの第一人者だったアントン・コービンが「ラスト・ターゲット」に続いてミステ . . . 本文を読む
周防正行のエンターテインメント路線復帰作「舞妓はレディ」のエンドクレジットと同じく,この作品のエンドロールでも出演者総出でダンスが繰り広げられる。しかしその踊りが醸し出すクライマックス感とも言うべき感触,盛り上がりの違いは歴然としている。ドラマの厚みとうねりの総量で圧倒する本作は,「映画監督」クリント・イーストウッドのキャリアの中でも,特別の位置を占める作品となった。
下町のちょっとやさぐれた若 . . . 本文を読む