札幌文化芸術劇場hitaruの企画「映画へと導く映画」のVol.5が,「ドライブ・マイ・カー」と「偶然と想像」で話題の濱口竜介監督を招いて,創世スクエア3階のScartsで開かれた。このひとつ前の回は「私をくいとめて」で「のん。」の本格復帰を飾った大九(おおく)明子監督をゲストに開催されていたようだが(結果的に翌年に延期),今や世界的にも話題の濱口監督を口説いた企画の妙とそれに応えて忙しい中来札さ . . . 本文を読む
山椒は小粒でピリリと辛い,という印象の「作家」だったカナダ出身の俊英ドニ・ヴィルヌーヴが,何故か立て続けにSF超大作を手掛ける「大家」になってしまったのは,やはり「メッセージ」の成功が大きく影響しているのだろう。テッド・チャンの原作を大きな画角を駆使しながら,ヴィルヌーヴらしい運命に翻弄される人間の心の移ろいを巧みに物語に盛り込んだ同作は,ヴィルヌーヴのフィルモグラフィーの中でも,特別の場所に位置 . . . 本文を読む
音楽ライターの青春物語と聞いて,真っ先に思い浮かべるのはキャメロン・クロウの「あの頃ペニー・レインと」だ。クロウ自身の体験を基にした,若き音楽ファンが家を出てロック界に身を置き,傷付きながら人生を学んでいく物語は,ここまでのクロウのフィルモグラフィーの中で,今もなお最も高い場所に位置する秀作だった。特にツアーの仲間たちとエルトン・ジョンの「タイニー・ダンサー」を合唱するシーンの高揚感は,まだ「ロッ . . . 本文を読む
ジョーダン・ピールは「ゲット・アウト」と「アス」のたった2本の作品によって,ホラーにあまり馴染みのない映画ファンを強い力でグリップした上で「ブラック・ライヴズ・マター」運動を水面下で推し進めるという離れ業を成し遂げて見せた。その独特の乾いた作風には,コメディアンでもあるという自身の資質が多分に影響しているように見える。すなわち「人生は近くで見ると悲劇だが,遠くから見ると喜劇である」というチャップリ . . . 本文を読む