北海道警察で実際に行われていた裏金作りの実態を,婦人警官の殺人事件と絡めて描いた佐々木譲の原作は,舞台となった札幌に少しでも土地勘のある人間にとっては,臨場感溢れる描写がたまらない警察小説の佳作だった。既にシリーズ化されている読者の数から,商売になると踏んで映画化に乗り出したのは,あの角川春樹。往年の「角川映画」を彷彿とさせるメディア・ミックス商法で,栄華をもう一度と夢見たまでは良かったのだが,自 . . . 本文を読む
今になって振り返れば,これまでの作品の端々に,こんなことをやらかしてもおかしくはない,という予兆を読み取ることは可能だ。しかし,ここまで徹底的に「アメリカ人がすなるプログレ」を突き詰めるとは思わなかった。
これは何処から見ても立派な「プログレ」であり,かつフレイミング・リップスの過激な面が強く出たポップ集でもある,壮大かつ新鮮な音楽実験リポートと呼ぶのが相応しい作品だ。
代表作と呼ばれている「T . . . 本文を読む
第6回まで進んだところでの平均視聴率が12.16%。ドラマの成否を判断する上でのボーダーが25%~20%だった頃(80年代~90年代半ば)から見れば,決して満足のいく数字とは言えないかもしれないが,ドラマの退潮が著しいここ数年の基準で見れば,取り敢えず「失敗作」という烙印は免れる成績は取っている。
しかし,過去に山本薩夫の映画化作品もある山崎豊子の原作に対して,「開局50周年」という冠を被せ,豪華 . . . 本文を読む
ここにいるのは「スパイダーマン」シリーズで,コロンビア(ソニー)に巨万の富をもたらした,大ヒットメイカーとして(或いはよそ行き)のサム・ライミではない。「キャプテン・スーパーマーケット」を含む「死霊のはらわた」シリーズの,あのお茶目でパワフルでちょっとだけ下品なサム・ライミが,満面に笑みを湛えて立っている。
時空を飛び越える古代の呪いに飛び散る粘着物質,死体の逆襲に立ち向かう主人公の勇気。活劇に求 . . . 本文を読む
映画の冒頭とラストで,68歳の主役キム・ヘジャが2度,文字通り身体をうねらせて踊る。悲しみ,怒り,憤懣,そして愛情。二度のダンスは,物語の進行に伴って異なるニュアンスを湛えてはいるが,どちらもキム・ヘジャというパワフルな噴出口から迸り出る,様々な感情が溶け合った熱いマグマのようだ。
「殺人の追憶」と「グエムル-漢江の怪物-」の2作で,韓流映画に疎い私を打ちのめしたポン・ジュノ監督の新作は,母親と . . . 本文を読む
各方面から絶賛されているイタリア産のミステリーだが,私が「イタリア映画」に対して抱いていたステレオ・タイプの「明るさ」とは別種の,知的なポジティブさとでも呼ぶべき感触が,新鮮な後味を残す。
イタリアの片田舎,静かな湖の畔で若い女性の絞殺死体が見つかる。イタリア版の「ツイン・ピークス」かと思われるようなオープニングから展開されるのは,被害者が関わっていた4つの家庭を巡るゆったりとした推理劇だ。陽光 . . . 本文を読む
札幌ドームに徒歩10分の所に住んでいる道産子でありながら,稲葉ジャンプを経験したことがない私だが,今年の日本シリーズは楽しませてもらった。
最終戦となった第6戦も,最後は一打同点というところまで粘りを見せ,「つなぐ打線」の本領を発揮したと言えると思う。2度チャンスが回って来たクリーンアップの3番と4番が,いずれも3振に倒れて得点には至らなかったが,シーズン終盤に下降線を描いていたチーム全体の状況か . . . 本文を読む
TBS金曜10時枠の「おひとりさま」は,阿部寛と大橋のぞみというコンビで親子の絆を描いたこの春の佳作「白い春」の脚本家,尾崎将也の新作だ。しかし局は違えど題名でほぼ予想が付くように,尾崎作品としては,同じ阿部寛の主演により男版の「おひとりさま」を乾いたユーモアで描いた「結婚できない男」の続編と言っても差し支えないドラマになっている。
本作と「結婚できない男」との顕著な違いは,徐々に恋に落ちていく . . . 本文を読む