子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「母という名の女」:毒親を超える母の愛

2018年07月29日 12時17分37秒 | 映画(新作レヴュー)
押しも押されぬ世界的なトップ・ディレクターとなったアルフォンソ・キュアロンが牽引してきたように見える近年のメキシコ映画界に,突如として現れたミシェル・フランコという新しい才能は,カンヌ映画祭にとっても驚きだったようだ。「父の秘密」から3作が連続して同祭で受賞するという快挙は,同じくカンヌに愛された河瀨直美や是枝裕和の諸作同様に,良心的な非商業的フィルム(「万引き家族」の大ヒットは嬉しい例外だが)に . . . 本文を読む

映画「グッバイ・ゴダール!」:ゴダールの反応が「勝手にしやがれ」だったら最高だったのに

2018年07月21日 12時33分08秒 | 映画(新作レヴュー)
映画史上のカリスマの一人,ヌーヴェルヴァーグの旗手ジャン・リュック=ゴダールの若き日の姿(と言っても30代の後半)をスクリーンに再現する。いくら元妻の回想録をネタ本にしているとはいえ,並の神経の監督であれば尻込みするような企画に立ち向かったミシェル・アザナヴィシウスの勇気を,まずは讃えたい。志はアカデミー賞を獲得した「アーティスト」よりも遥かに高い。 ゴダールがアンナ・カリーナと別れた後に結婚し . . . 本文を読む

映画「セラヴィ!」:壮年ウェディング・プランナーのいちばん長い日

2018年07月14日 21時56分41秒 | 映画(新作レヴュー)
フランス国外にルーツを持つエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュのコンビが監督した「最強のふたり」は,日本でも超ロングランヒットとなったが,私はあまりにもフラットで予定調和な展開についていけず,置いてけぼりを食った記憶がある。その勢いを駆って同作の主役オマール・シーと再びタッグを組んで撮った「サンバ」も,人種問題を取り上げるトーンのシリアスな比重に疑問符ばかりが浮かんできて,良い観客にはなれなか . . . 本文を読む

映画 2018年上半期レビュー落ち穂拾い(その2)

2018年07月09日 23時32分56秒 | 映画(新作レヴュー)
女は二度決断する:★★★★ ヨーロッパで進む移民排除,ポピュリズム政治の台頭という流れの中で,NIMBY的かつ民主主義・法治主義を信頼する表層的な良識のようなものを,文字通り木っ端微塵に吹き飛ばしてしまうような母の決断を描いた作品。トルコ出身のファティ・アキンが,今自分こそがこの問題を取り上げないといけない,という強い責任感に背中を押されて撮り上げた作品だということが,すべてのショットから伝わって . . . 本文を読む

映画 2018年上半期レビュー落ち穂拾い(その1)

2018年07月07日 20時44分24秒 | 映画(新作レヴュー)
15時17分,パリ行き:★★★ 四捨五入したら既に90代という大御所イーストウッドが,このところ頻繁に取り組んでいるノン・フィクション系列の1作品。今回は当事者の事件前のエピソードと,列車ハイジャック時の描写とで,明らかにヴォリュームのバランスを欠いている点が特徴。世界中のどこでも起こり得るテロの恐怖とそれに巻き込まれる普通の人々の姿を対象としながら,一般的な社会的評価は決して芳しくない人間が,思 . . . 本文を読む

映画「万引き家族」:世の中を恨む暇を惜しんで生きていく

2018年07月01日 21時18分12秒 | 映画(新作レヴュー)
暗い話題ばかりの日本で,予選リーグの健闘により思いがけず国民の希望の星となりつつあったサッカー日本代表だが,ノックアウトラウンド進出を狙って「ファイト放棄=他力本願」という判断をしたことによって,実に微妙な役回りを演じることになってしまった。日本が先制された段階で,本当はコロンビアとセネガルも引き分け狙い,という戦術を取ることも出来たのだが,両国は日本対ポーランドの結果に関係なく,最後までフェアに . . . 本文を読む