年老いた家政婦と彼女に育てられた50男との心の交流を描いた物語。
要約してしまうと,たったこれだけの話なのだが,ディニー・イップという役者が演じる家政婦の笑顔の力が全編を引っ張る。
物語には展開もツイストもどんでん返しもない。あるのは,良い人しか出て来ない,普通に考えれば2時間の映画を保たせるにはあまりにもナイーヴでシンプルな要素ばかり。
にも拘わらず,映画が終わって席を立つ時には,人生の大先輩の . . . 本文を読む
湊かなえの原作を,阪本順治が大々的な北海道ロケを敢行して映画化した,吉永小百合主演の文芸大作。書き割りと見紛うばかりの壮大な利尻富士が画面に奥行きを与え,離島の厳寒が伝わってくるような礼文島の冬の風景は,生きることの厳しさを雄弁に物語る。
だが,同じ湊かなえの原作を映画化した佳作「告白」のようなドラマティックな展開を期待した私の前で繰り広げられるのは,どこを探してもミステリーと呼べるような「謎」が . . . 本文を読む
高校バレー部の花形で,美形の彼女もいる桐島君が,突然バレー部を辞め,学校からも姿を消す。彼を取り巻く同級生たちは一様に動揺するが,そんな騒動にもめげず,映画研究会の面々は顧問の反対を押し切ってゾンビ映画を撮る。
桐島君は最後まで画面に登場せず,同級生たちは桐島の気持ちを忖度できずにいらいらを募らせ,遂にはゾンビと化して高校の屋上で惨劇が繰り広げられる(?)。
無限のエントロピーを抱え込みつつ,不安 . . . 本文を読む
劇場で「007」シリーズを観るのは,ひょっとしたら小学生の時以来かもしれない。本シリーズについて,「大人の男」という言葉が漂わせる数多のイメージと「ヨーロッパの老舗ブランド信仰」とを自然に結びつけていたショーン・コネリーこそが唯一の「007」であるべき,というステレオタイプの捉え方をしていた私は,ロジャー・ムーアやピアース・ブロスナン版にはとんと興味を持てないまま,この「アクション大作」からは距離 . . . 本文を読む
仕事と私事,どちらも多忙を極めた結果,鑑賞本数が久々に三桁を割ってしまい,ベストテンを選べるだけの母数が確保できなかったと白状せざるを得ない。
そんな中でも,闇に点る暗い魅力で私を勇気付けてくれた以下のフィルムには,深く感謝を捧げたい。
鑑賞順
1 ヒューゴの不思議な発明 マーティン・スコセッシ
2 別離 アスガー・ファルハディ
3 ファミリー・ツリー アレクサンダー・ペイン
4 ル・アーブルの . . . 本文を読む