子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2009年冬シーズンTVドラマレビューNO.1:「風のガーデン」VS「ありふれた奇跡」

2009年01月30日 23時29分52秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
今クールでの注目はやはり,脚本家山田太一にとって久しぶりの連続ドラマとなったフジの「ありふれた奇跡」だろう。山田太一といえば,高度成長期からバブル揺籃期にかけて,揺れ動く家族の形や若者達の悩みを活写した秀作「岸辺のアルバム」や「ふぞろいの林檎たち」などで知られる,日本TV界屈指の名脚本家だ。ここ最近は単発ドラマかミニシリーズに限っての執筆が続いていたが,TVの連続ドラマ初主演となる加勢亮という逸材 . . . 本文を読む

相対性理論「ハイファイ新書」:語呂合わせ,貝合わせ,鉢合わせ

2009年01月28日 23時36分41秒 | 音楽(新作レヴュー)
車で聴きながら思わずツッコミを入れてしまった。「交換留学生,集団下校中」って,西高東低かっ?なんて。 不思議系女子高校生の(ような)舌足らずで,音程がスリリングな囁き声が,意味や語感が対をなす(ような気がする)単語の並びが生み出すリズムに乗って,「平熱36度2分」の気分を歌うグループのメジャー・デビュー盤だ。 耳に飛び込んできた音は,一発芸のような扮装をまといながら,確実に「ザ・スミス」から「く . . . 本文を読む

Walter Becker「Circus Money」:スティーリー・ダンの神髄,ここにあり

2009年01月25日 22時41分34秒 | 音楽(新作レヴュー)
波のない穏やかな海へと出航した音符群が,突如として空中に持ち上げられたかと思うや,その最高点から,風に舞う薄紙のように予測不可能な軌道を描いて,ゆっくりと舞い降りて来るようなメロディ。 「ガウチョ」までのスティーリー・ダンの全てのアルバムにおいて,聴くもの全てを幻惑した魔力が,ウォルター・ベッカーの新しいソロ・アルバムには確かに存在している。 殆ど無視に近かったショウ・ビズ界の扱いが,再結成した . . . 本文を読む

Jenny Lewis「Acid Tongue」:逞しくも,たおやかな声

2009年01月22日 00時00分34秒 | 音楽(新作レヴュー)
オルタナ・カントリーと呼ばれる分野から,ウィルコやルシンダ・ウィリアムズに続いて,驚嘆すべきアーティストが出現した。 よく馴染んだ革製品のような味を持つメロディが,伸びやかで繊細な声と躍動感溢れる演奏によって綴られる。大地にどっしりと根を下ろした安定感と所々で顔を見せる尖ったアイデアが絡み合い,独特なグルーヴ感を生み出している。昨年暮れに出た作品だが,年内に聴いていれば間違いなく「今年の10枚」に . . . 本文を読む

アジアカップ予選 日本対イエメン【2:1】:田中達也の髪型はどうなんだろうか?

2009年01月20日 22時28分34秒 | サッカーあれこれ
どの選手もボールを持ったら,まず前を向いて勝負出来るかどうかの間合いを計り,素速く次のプレーの判断を下す。廻すと決めたら,すかさずサイドに展開し,自ら動いてリターンを貰い,再度突破の機会を窺う。一旦パスを受けた選手も,もう一度ボールを受けられる位置に動いて,呼吸を合わせる。 前半の15分過ぎまで,ボールに連動したこんな動きがピッチのあちこちで見られ,イエメンのサイドが決壊して,試合が壊れるくらいの . . . 本文を読む

映画「チェ/28歳の革命」:アルゼンチン人だったのか

2009年01月17日 16時23分09秒 | 映画(新作レヴュー)
ここ数年精力的に活動しながら,どれもやや生彩を欠いた作品が続き,登板過多によるエネルギーの枯渇が心配されたスティーヴン・ソダバーグだが,話題となっている本作も,残念ながら全体の印象は薄味だ。「トラフィック」で見せた過激とも言える技術信仰を更に押し進めることで,映画の新たな地平を切り開く可能性を期待してきた私のような人間は,鮮やかではあるが平板な印象が拭えない歴史の絵解きを前にして,満員の観客の間で . . . 本文を読む

映画「ラースと,その彼女」:こんな町に住みたいと思う

2009年01月14日 21時44分43秒 | 映画(新作レヴュー)
自分の出生と同時に母を亡くすという悲劇を引きずりながら,優しい心で静かに日々を過ごす青年ラースが,リアルドール(等身大の女性の人形)に恋をする。ひとつタッチが違えば,現代人の孤独が行き着いた先にあった狂気,というテーマでセンセーショナルなカルト・ムービーが1本出来上がって終わり,ということになっていたかもしれない。 しかしそんな物語はやがて,生命が持つ尊さと,人間が現代の社会で生きていくことの意味 . . . 本文を読む

映画「地球が静止する日」:役者までもが静止してしまうとは

2009年01月10日 17時21分45秒 | 映画(新作レヴュー)
ロバート・ワイズが監督した1951年制作の「地球の静止する日」のリメイク作品だが,二つの作品の間に横たわる語り手の技術の差は大きかった。オリジナル作品とはたかだか助詞1文字が異なる(「地球の」が「地球が」に変わっている)だけなのに。モノクロでチープながらも緊張感と気品を湛えた特撮と,異星人との遭遇における恐怖と興奮を見事に表現していたテルミンの妖しい響きが懐かしい。 オリジナル作品が,東西冷戦が . . . 本文を読む

映画「シャイン・ア・ライト」:もう一つの「ラスト・ワルツ」を狙うべきだったか

2009年01月07日 22時29分38秒 | 映画(新作レヴュー)
編集者として「ウッドストック」に関わり,ザ・バンドの解散コンサートを記録した傑作「ラスト・ワルツ」を監督したマーティン・スコセッシが,ローリング・ストーンズとがっぷり四つに組んで撮り上げたドキュメンタリー。 しかし,劇中で出てくる台詞のように,スポットライトで熱せられたミック・ジャガーの尻から炎が吹き上がることはなく,淡々と2時間は過ぎていく。この責めは,撮影当時63歳という年齢を忘れさせるような . . . 本文を読む

映画「その土曜日,7時58分」:シドニー・ルメット帰還

2009年01月03日 21時09分24秒 | 映画(新作レヴュー)
今年も駄文にお付き合いいただける皆様,あけましておめでとうございます。 素晴らしい映画や音楽との出会い,日本代表の2010年W杯の出場権獲得と日本のクラブのACL3連覇と札幌のJ1復帰,そして皆様のご健康を願いつつ,今年も好き勝手なことを書いていきたいと思っております。気が向いた時で結構ですので,冷やかして頂ければ幸いです。よろしく。 高齢の監督の活躍があちこちで話題になっているが,制作時に83 . . . 本文を読む