監督が札幌と横浜で指揮を執っていた時に,その薫陶を受けた選手たちが素晴らしいプレーを見せて,見事に岡田ジャパンの初得点,初勝利に貢献した。この実に日本的な物語は,裏番組で放送されていたハンドボール五輪予選の熱狂に比べると,静かで地味ではあったが,W杯予選に向けたチームの高揚感はしっかりと感じられた。
ボスニア・ヘルツェゴビナは,足下は柔らかく,上背はみんながオシムの親戚であるかのように大きかった . . . 本文を読む
(承前)
月9のスタートがそんな状況でやや落胆させられたことに比べると,放送前には期待していなかったにも関わらず,ヒロインの造形力という点で一頭地を抜く出来を示したのが,日本テレビ水曜日の「斉藤さん」だ。
世知辛い一方,馴れ合いが横行する現代社会で,「筋を通す」ことの困難さを,閉鎖的なサークルの象徴である子育てママの集団を使って描き出そうとする試みは,観月ありさという未完の大器が持てる能力をフルに . . . 本文を読む
2010年のW杯南米予選で現在第7位の国の24歳以下限定という,言わばB代表チームとの対戦となった,岡田ジャパン2度目の船出は,盛り上がりを欠くスコアレスドローという結果となった。
戦い方の方向性はほの見えたが,航海の見通しは決して明るいものではないようだ。
しかし,楽なW杯予選というものが存在しない以上,悲観する必要もないはず。冷静に,点を取るために足りないものを詰めていく時間は,まだ十分にある . . . 本文を読む
脚本家に野島伸司(フジ「薔薇のない花屋」)や大森美香(TBS「エジソンの母」),原作・原案では島田雅彦(フジ「あしたの喜多善男」)に万城目学(フジ「鹿男あおによし」)。2008年冬シーズンのドラマは,製作陣に多彩なビッグネームが揃った。
名前に見合う順調なスタートを切った番組もあれば,勢い余って前のめりになっている番組もありと,滑り出しは様々だが,初回もしくは2回目を終えた所でのレビューを敢行して . . . 本文を読む
観終わって,我知らず微笑んでいたに違いない。少なくとも隣で観ていたご婦人はそうだった。
人種差別という,歴史上の,そして現在も厳然と存在する問題を取り扱いながらも,自然と身体の中から笑いと力が湧いてくる,こんな気分になれる作品はそうはない。
映画の中で自ら何度も「ウォー,ウォー,ツー」(WORLD WAR Ⅱ)と呼んだ戦争=第二次世界大戦の勃発時,カリフォルニアの収容所に入れられ,今はニューヨー . . . 本文を読む
確かに力量の差はあった。個人の技術,走力,組織力,どれを取っても柏高が上回っていたことは確かだ。しかし,4:0というスコアが両校の差を反映したものだったかと問われれば,そこまでの差はなかったというのが正直な感想だ。
あの程度の差であれば,高校生の試合である以上,番狂わせは起こり得る範囲内だったという感触が残る。それでも現実には4:0というスコアになってしまった。
それは何故なのだろうか。
前半の . . . 本文を読む
昨年発表されたくるりの「ワルツを踊れ」に端を発し,年が明けて「4分間のピアニスト」,更には「のだめ」のスペシャル番組と楽しんできたクラシック音楽影響甚大作品群の掉尾を飾るのは,スイスのフレディ・M・ムーラーの新作「僕のピアノコンチェルト」。
「山の焚火」の静謐な画面から想像した,若き天才の苦悩,というイメージとはかけ離れた,軽妙かつポジティブなお伽噺は,正にお正月に相応しい明るさと楽しさに満ちた秀 . . . 本文を読む
原作のテイストを尊重しながら,生身の俳優の特質を最大限生かしてTVドラマ化する,という偉業を成し遂げたフジテレビのドラマ「のだめカンタービレ」。
一昨年のドラマ放送から約1年という期間を経て,若き出演者たちは,TVや映画に引っ張りだことなるものあり,プロ野球選手の伴侶となるものあり,と様々な形でブレイクしたため,同じキャストによる続編の制作は無理かと思っていたのだが,パリに渡ったのだめと千秋のエピ . . . 本文を読む
タイトルが表すラストの4分間の演奏シーンの迫力ばかりが喧伝されているが,そこに到るドラマの周到な構築術が冴え渡った,実に技巧的な作品だ。
ピアニストと女教師の二人の主役が持っている演技の質と温度の差が,音楽に対して持ち続ける同質の情熱と鮮やかな対比をなす対話シーンの緊張感は,ラストの演奏シーンを上回る。ダイアローグの重みに潰されることなく,お互いに上手を引いて渡り合う二人から発せられた熱が,音符を . . . 本文を読む
「激突」や「ヘルハウス」,更に「ある日どこかで」など,渋めの映画化作品の原作を幾つもものしてきた小説家,リチャード・マシスンの手になる「吸血鬼」の3度目の映画化。3度目にして初めて,映画のタイトルが小説の原題どおり「I AM LEGEND」となったようだが,大勢の映画人がここまで執念を燃やす理由が,朧気ながら見えたような気がする。4度目の可能性は,多分ない,と思うのだが,どうだろう。
前半の荒廃 . . . 本文を読む