先月19日,元ザ・バンドのメンバーだったリヴォン・ヘルムが亡くなった。長く喉頭がんを患っていたことは知られていたが,一度は出なくなった声が戻り,カムバック作でグラミー賞を穫ったことで,完全復活だと思っていただけに,とても驚いた。
60年代というだけでなく,「ロック」という音楽ジャンルの最良の核とも言える部分を形成したグループの一つでありながら,今となっては人の口の端に上ることが少なくなってしまった . . . 本文を読む
特定の企業の肩を持つことは筆者の本意ではないのだが,某大手輸入レコード店が展開している「輸入盤千円生活」キャンペーンは,そんな建前を越えて宣伝したくなるような嬉しい企画だ。
子供の教育費が家計を圧迫し,ボーナスも下がる中,頑張って品揃えを充実させているTSUTAYAでも入荷する可能性が低いと思われるような,かなり渋めの旧譜がきっかり千円で手に入るというセールは,音楽愛好家にとっては文字通り「悪魔の . . . 本文を読む
ザ・ドゥルッティ・コラム。1980年頃のイギリスにおけるマイナー・レーベルの動向に,少しでも関心があった音楽ファンならば,特別の感慨を抱かずにはいられない名前だ。
夜明け前の薄明かりの中から聞こえて来るような,リヴァーブとディレイを駆使したギターが持つ独特の響きは,世界のきしみに耐える辛さと解放感の両方を湛え,30年という時を超えて,今も新鮮に響く。
当時,新しい音を模索し続けていた冒険的なレー . . . 本文を読む
この春,同一名義による「ベースメント・テイプス」と共に,ライヴ盤「Before The Flood(邦題:偉大なる復活)」のデジタル・リマスター盤が発売された。
今はなき札幌のロック喫茶「異間人」で,紫煙漂う空間に弾ける音に聞き入っていた高校生時代を思い出しつつ聴いているのだが,35年を経て聴き直した印象はとにかく「熱い!」の一言だ。
邦題が示す「復活」とは,ボブ・ディランが1966年7月に起こ . . . 本文を読む
トッド・ラングレン「ラント:ザ・バラッド・オブ・トッド・ラングレン」
天才ミュージシャンの呼び声高く,プロデューサーとしても数多くの傑作を残してきたトッド・ラングレンだが,ミュージシャンの間での評価と一般リスナーにおける知名度の落差が,これ程大きいアーティストもそうはいないかもしれない。ひょっとするとアーティストとしてのクリエイティビティーよりも,ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォエバ . . . 本文を読む
黒さを強調したベタなヴォーカルが,ソリッドなファンクビートに乗って気持ち良くうねる。かと思えば,フィルム・ノワールのナレーションのようなクールなラップや,ロナルド・レーガンの演説のコラージュが,隙あらば身体を揺らすリスナーの足を掬おうと待ち構えている。
デトロイトという,ブラック・ミュージックにとっての梁山泊のような街から1981年に突如として現れた,架空のウォズ兄弟を中心とするファンク・ユニット . . . 本文を読む
私にとって,ザ・バンドとスティーリー・ダンに続く,3番目の,そしてイギリスのバンドとしては初となる,「理屈も屁もなく感服しましたバンド」の座に鎮座したのが,このXTCだった。
パンク勃興期に,アンディ・パートリッジがかき鳴らすギターと,バリー・アンドリュースがシンセサイザーから捻り出した歪んだビートで,シーンの端っこに居場所を見つけた4人組は,バリー・アンドリュースに替わってデイブ・グレゴリーが加 . . . 本文を読む
1970年代後半から80年代初頭にかけて,シンセサイザーとシーケンサー(プログラムによって音源を鳴らす制御装置)が急激に発展・普及したことに伴って,男性キーボーディストが作るダンスビートにソウルフルな女性ヴォーカルが乗っかる,という音楽スタイルの男女二人組が,洋の東西を問わずポピュラーな形態となってどっと登場してきた。
1980年代初頭に世界中を席巻したユーリズミックスしかり,文字通りワン&オンリ . . . 本文を読む
今やすっかり人の口の端に上ることもなくなったドゥービー・ブラザーズではあるが,70年代に青春を送ったロック好きの中には,その名前を聞いてちょっと気恥ずかしくも甘酸っぱい感傷に浸る人も多いのではないだろうか。
巷で話題のおじさんバンド愛好者の中には,嫌がる子供や新入社員達に無理矢理LP版を聴かせている「隠れドゥービー」ファンも少なからずいるのではないかと推測される(いるのかっ?)が,彼らは私の高校時 . . . 本文を読む
ヴォーカルのグリーン・ガートサイドを中心に結成されたスクリッティ・ポリッティは,ソウルミュージック風味のフォークソングに,哲学や政治を扱った歌詞を載せた風変わりな音楽で,独立系のレコード会社「ラフトレード」からデビューした。
1982年に出たファースト・アルバムは,チープなリズム・ボックスを逆手に取ったビートに,グリーンの柔らかいファルセット・ヴォイスが絡んで生み出されたユニークな曲の数々によって . . . 本文を読む