ドッペルゲンガー。黒沢清も同名の作品を撮っているが,クローン人間も含めて,映画監督にとって「この世に自分がもう一人いる」という考えは,非常に魅力的なものなのだろう。アントニオーニの「さすらいの二人」やキェシロフスキの「ふたりのベロニカ」から,近年ではヴィルヌーヴの「複製された男」まで,シネアストと呼ばれる才人たちが好んで題材にしてきたのは,一つの画面の中に同じ人間が存在することの不可思議さを表現す . . . 本文を読む
昨年ある会合で国内AI研究の第一人者と言われる方が,21世紀のシリコンヴァレーと呼ばれる今の深圳について「一度行ったくらいで知った気になってはいけない。毎年行かないとリアルな姿を捉えることは出来ない」と話しておられた。毎年行けと言われても,そもそも中国に足を踏み入れたこともない人間にとってはハードル高過ぎのリクエストだと思って聞き流していたのだが,「あなたの名前を呼べたなら」で何度も映し出される, . . . 本文を読む
フレディ・マーキュリーの生涯を描いた「ボヘミアン・ラプソディー」があそこまでヒットするとは思わなかった。監督ブライアン・シンガーの名前が最終的に削られるというのは,撮影中に余程のインシデントが発生したとしか思えなかったのだが,そんなトラブルに反して映画の出来は上々で,リアル・タイムでクイーンを聴いていた世代が劇場に詰めかけたところまでは充分に納得できるサプライズだった。ところがクイーンもフレディも . . . 本文を読む
武蔵が日本代表,しかもW杯予選に招集され,その間に行われたルヴァン杯のクォーター・ファイナルを勝ち上がるという,チームとしてのモチベーションは上々という状況で迎えた第26節。相手は降格圏との境界グループに留まっている仙台で,しかも最近ホームでの相性がよい相手とあっては,確実に勝ち点を稼がなければならない試合だったが,蓋を開けてみれば7位と15位の対戦とは思えないほど,完膚なきまでに潰されるという結 . . . 本文を読む
1980年代初頭,ヴィデオが家庭に普及し始めた頃に,その普及速度を速めた一つの要素が「AV」の存在だ,という趣旨の台詞が出てくる。当時,ヴィデオデッキを買った世代のど真ん中にいた私は,本作のハイライトである黒木香の作品こそ観たことはなかったものの,世の中が彼女とその生みの親とも言える本作の主人公村西とおるの「エロこそ人間の根源」的な言動に喝采を送った空気感はいまもはっきりと覚えている。
地上波では . . . 本文を読む
クエンティン・タランティーノの9作目となる監督作は,自らの映画漬けの半生を言祝ぐような,凄まじいばかりの幸福感に満ちたハリウッド・クロニクルだ。本人は来日中のインタビューで「デビューから本作まで既に9本撮った。映画監督としては10本目となる次作が最終作と決めている」という,タランティーノ・ファンにとっては胸を塞がれるような発言をしているが,本作の内容がそんな発言を裏付けるような「フィナーレ序章」と . . . 本文を読む