劇作家平田オリザの小説の映画化に,「桐島,部活やめるってよ」の脚本を担当した喜安浩平が挑む。そう聞いただけで浮かんでくる「曲がりくねった青春ストーリー」とは感触を異にする,かなり真っ当なアイドル映画だ。
正直,高校の部活に打ち込むストレートな青春賛美という,ちょっと予想外の展開に戸惑ってしまったのだが,どのシーンからも繊細でありながら同時に紙やすりをなぞるようなザラザラしたニュアンスが立ち上ってく . . . 本文を読む
どっちに転んでもおかしくない試合だった。
ボールは札幌が保持し,CKの数も10対2と圧倒しているようには見えたが,押されている展開からボールを奪い,手数をかけずに素速いパスを2本,3本と繋いであっと言う間に札幌のゴール前に迫る水戸の攻撃の方が遥かに圧力は高かった。
それでも唯一の得点を挙げたのは福森のキックの精度と,徐々にコンディションを戻しつつあるように見える都倉の決定力のおかげ。綱渡りのよう . . . 本文を読む
「ハッピーエンド」がお約束となっている数多くのおとぎ話を,少し視点をずらし,リアルな世界にはつきものの綻びをまとわせて映画化するという試みは,ロブ・ライナーの佳作「プリンセス・ブライド・ストーリー」あたりから盛んになってきたのではないかという気がする。
「お姫様」にも悩みがあり,必ずしも「王子様」は完全無欠のヒーローではないというのが現実。同様に苦難を超えて結ばれたエンディングが人生においても最高 . . . 本文を読む
アルカーイダによるテロによって2001年9月11日に崩壊したワールド・トレード・センターがまだその威容を誇っていた頃,二つのビルに綱を渡し,そこを渡ろうと企てたフランス人の大道芸人を取り上げた「マン・オン・ワイアー」というドキュメンタリーがあった。高所恐怖症の私にとってはその意図すらも理解できない行為の一部始終を,実に丹念に追いかけてアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門を受賞した監督が,本作「博 . . . 本文を読む
たとえテクニックがなくとも,大向こうを唸らせるようなアイデアが出て来なくとも,がむしゃらにボールを前に運ぶんだという気力や,局面でのボールの奪い合いには絶対に負けない,という気迫が感じられるような場面を生み出してくれたなら,ここまで帰りの足が重くなることはなかったはずだ。骨折り損のくたびれ儲けとは,今日の札幌ドームに来た観客のためにある諺だったのかもしれない。
前節の試合が行われた水曜日から中3 . . . 本文を読む