昨年の本屋大賞を受賞した三浦しをんの原作は面白かったのだが,「博士と狂人」(サイモン・ウィンチェスター著1999年)で明らかになった世界最高の辞書と呼ばれるオックスフォード大英語辞典(OED)が編纂されるまでの信じられないようなエピソードに比べると,物語の核となるべき辞書編纂の作業部分の迫力に欠ける,というのが正直な印象だった。そのせいもあり,映画化作品については,これまでフォローしてきた石井裕也 . . . 本文を読む
ニューヨークでは作品が16億円で落札され,ルイ・ヴィトンとのコラボレーションでバッグを制作し,ヴェルサイユ宮殿で個展を開く。カニエ・ウェストのアルバムのデザインによって,ストリート系の知名度も高い。そんな,おそらくは村上春樹に次いで日本人で二番目に知名度の高いと思われる「ムラカミ」こと,村上隆が映画制作に乗り出した。
「めめめのくらげ」は,村上隆テイスト溢れる生き物「ふれんど」に彩られた,カラフル . . . 本文を読む
ドン・デリーロの原作を,台詞も忠実に映画化したデヴィッド・クローネンバーグの新作は,都会に生きる若者の孤独をスタイリッシュに描いて,カイエ・デュ・シネマのベストテンでレオス・カラックスのカムバック作「ホーリー・モーターズ」に次いで第2位という高い評価を得た。
かつて「ヴィデオドローム」や「スキャナーズ」そして「デッドゾーン」で私を魅了したデヴィッド・クローネンバーグは,いつの間にか「MOVING . . . 本文を読む
ドニ・ラヴァンの,50代に突入したとは思えない,一瞬たりとも目が離せない素速い動き。否応なしに身体が反応してしまう音楽。どんなに考えても正しい解釈は見つかりそうもない,果てしない物語。
今頃どうしているのだろうか,と考えることもなくなっていたあのレオス・カラックスが,身震いのするような素晴らしい作品を携えて帰ってきた。こちらのこざかしい思考を超えて,じかに心の奥のひだを逆立てようとするかのような映 . . . 本文を読む
前半と後半では,まるで違うチームのようだった。コンサドーレ札幌ではなく,京都の方がだ。相手選手への寄せ,マイボールにした時の広い視野と精緻な組み立て,そして何よりルーズボールの完璧と言って良いほどの支配。何度かGKとの1対1を決めきれない場面があったことに象徴されるように,フィニッシュの精度に問題を抱えてはいたが,明らかに札幌よりは二段階くらい上のサッカーをやっていた,という印象だ。
試合全体を振 . . . 本文を読む