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映画「ホイットニー オールウェイズ・ラヴ・ユー」:これが「家族が全面協力」って,どーゆーこと?

クラプトンの次はホイットニー・ヒューストン。新年早々,ミュージシャンを題材にした優れたドキュメンタリーを立て続けに拝めるとは,なんとも「オールウェイズ・ラヴ・ユー」な気持ちだ。と流れで安易に書いてはみたものの,1945年生まれで存命中のクラプトンに対して,その18年後に生まれながら48歳という若さでこの世を去ったホイットニーの生涯を辿った「ホイットニー オールウェイズ・ラヴ・ユー」は,フライヤーにある「知られざる素顔に迫るドキュメンタリー」というティピカルな宣伝文が,重く冷たい響きを放つ作品だ。

ディオンヌ・ワーウィックを叔母に持つ芸能一家に生まれ,母の後押しで華々しいデビューを飾る。ケヴィン・コスナーとの共演でセンセーションを巻き起こした「ボディーガード」で頂点を極めた後,ドラッグ漬けとなり,最後はひとりホテルで溺死する。一般に知られているそんな「スーパー・スターの一生」を絵に描いたような人生を,監督のケヴィン・マクドナルドは主に家族の証言を中心に丹念に構築し直していく。驚くべきは,光よりも影の部分が多くを占める彼女の人生を語る彼らの率直さだ。16歳の頃からドラッグを常用していたことも,幼少期の彼女に性的な虐待を行っていた人物の名前も,彼らはカメラを前にして赤裸々に語る。ホイットニーにまつわる全てを語る彼らの姿の背後には,類い希なる才能によって輝かしい成功をその手に掴みながらも,最も強く欲していた「円満で幸福な家庭」をついぞ作ることが出来ずに彷徨う彼女の魂を鎮めるためには,どうしても今それを語ることが必要なのだ,という想いが透けて見える。

衝撃的なエピソードが続く作品中のハイライトは,ラスト近く,ドラッグ漬けの生活によって陥った窮乏状態から抜け出すために行ったツアーで唄う姿だろう。おそらく本人も無謀と分かっていながら敢えて立ったステージに,太った身体を晒し,出なくなった高音をオクターブ下げて絞り出すようにして唄う姿は,初めてのTV出演時に聴かせた「これから世界は私のものに」と言わんばかりの輝くような歌声と,並のホラーが裸足で逃げ出すような,残酷なまでの対比を描き出す。デビュー時,既に崩壊していた家庭が表に出ることがないよう,演技を強いられていたホイットニーが,ボビー・ブラウンとの結婚の後に,理想と違う現実を糊塗するかのように気丈に明るく振る舞う姿と併せて,彼女と同年代の人間は涙なくしては観られないはず。合掌。
★★★★
(★★★★★が最高)
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