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映画「ステイ・フレンズ」:フラッシュ・モブにも負けないミラ・クニスの眼力

本業の音楽から離れ「ソーシャル・ネットワーク」でザッカーバーグの脇を渋く固める役で光ったジャスティン・ティンバーレイクと,「ブラック・スワン」で主役のナタリー・ポートマンを食う存在感を見せたミラ・クニスが組んだ,近頃珍しい艶笑劇。アメリカでもお子様が映画興行における主役の座について久しいが,R(年齢制限)までは行かないが,PG-12(子供は親同伴が望ましい)くらいで留める程度のきわどさを売りにする作品を見かけないのは,何とも寂しいと思っていただけに,上り調子の若手をチョイスして企画を立ち上げたジェリー・ザッカーの慧眼に敬意を表したい。

「ステイ・フレンズ」(原題:実利を伴う友人)が色気たっぷりのコメディとして,自立し得たのにはいくつか理由がある。
一つは,冒頭で挙げた二人の主役が,実はメジャー作品の主役としては実質的なデビューとなること。どちらも美男・美女ではあるが,万人向けの整った美しさと言うよりも,都会的なシャープさが際立つ個性派であり,恋愛ものの主役を張るというイメージはない。それを敢えて,「セックスはするけれどもそれ以外は友人,という関係が男女間に成り立つのか」という70年代以降何度も取り上げられてきたテーマ(劇中,何度も「懐かしい」という台詞が飛び交う)を扱う作品の主役に据えることで,並のロマンスものとは違う緊張感を生むことを狙ったのだとしたら,その点では二人は申し分のない働きをしている。
特にミラ・クニスは,ベッドシーンでの脱ぎっぷりは些か潔さに欠けるが,時に相手を見つめる瞳の力とそれとはかなり落差のあるコメディ・センスに,大きな将来性を感じさせる。

もう一つは,主役コンビをNY出身の女とLA出身の男という,差異は小さくとも無視できない二つの文化圏の代表選手として選んだこと。実際には東男と京女ほどの育ちの違いはなくとも,育った環境が違う二人の間に生ずる習慣や文化の違いを,文化圏の違いに収斂させたことが,「それを言っても仕方ない」という真実を象徴的に描くことにうまくつながっている。その点では,ゲイの同僚役でいつもながらの安定感を見せるウディ・ハレルソンが,物語全体の重しの役目を担っているのかもしれない。

物語の導入部とクライマックスで二度,フラッシュ・モブ(不特定多数の群衆が一斉に決まったダンスを踊る,一種の街頭パフォーマンス)が出てくるが,渋谷や名古屋などで行われたものとは規模も迫力も違い,圧倒された。今,全米でSNSを使った呼びかけによる各種のストライキが頻発しているが,その萌芽はこのダンスにあるのかもしれないと思わせる凄さを,是非とも劇場で確かめられたい。
★★★
(★★★★★が最高)
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