子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「風に濡れた女」:ちょっと違うんだけれども…
「日活ロマンポルノ」と銘打った最初の作品,西村昭五郎監督による「団地妻 昼下がりの情事」の公開から「45周年」ということで,この度現役の監督5人によるリブートシリーズが始まった。「50周年」ではなく「45周年」というところが,何とも「らしい」感じがして微笑ましいのだが,ともかく人畜無害,清廉潔白,滅菌漂白な作品ばかりが幅を利かせるスクリーンに,一石を投じる効果は間違いなくあるはず。選ばれた,もしくは手を挙げた5人の監督のメンツを見ても,70〜80年代に「映画監督虎の穴」的役割を果たした伝説のシリーズの復活に,昭和の映画ファンの期待は高まる。
リブートに合わせて昨秋,日活ロマンポルノを取り上げたNHKのドキュメンタリーが放送されたが,その中でスクリプターの白鳥あかねが,最初の作品「団地妻 昼下がりの情事」の試写を観たときの感想を「とにかくびっくりした。けれども,これからこういう作品を作っていくんだな,と腹を括った」と語っていた。それまで撮っていたアクションとはまったく異なるジャンルへの挑戦に,半ば怖じ気づきつつも,生き残っていくためには,何が何でもやり抜くという潔い覚悟が印象的だった。その記念すべき第1作に主演した白川和子も,「独立プロでやってきた人たちを代表して,メジャーに乗り込むという気持ちが強かった」と語っていたが,当時制作に関わった大勢の人々の,ものづくりに賭ける職人的な心持ちこそが,歴史に残る作品群を生み出す原動力であったことは間違いない。
その意味で,リブートに挑む精鋭たちにかかるプレッシャーも相当なものだろう。
第1作の行定勲は,芸術とビジネスの狭間で苦悩しつつも,女には不自由しないマイナーな映画監督を主人公に据えたが,オリジナル・シリーズの多くとは異なり,視点を男に固定することによって,新味を出そうとしていた。塩田明彦監督の第2弾「風に濡れた女」の主人公も,演劇界から身を引いて海の近くの掘っ立て小屋に暮らす生まれついてのドン・ファンの男。偶然出会った女(間宮夕貴)にまとわりつかれるが,次第に男の隠遁生活はその意志とは裏腹に,女によって徐々に侵食されていく。
滾るような心情,情念,欲望をまといながら前へ突き進んでいく女性の姿を描いて数多くの傑作を生んできたオリジナル・シリーズに比べると,物語の仕立てに「芸術」っぽさが目立ち,生活感の希薄さがそのまま作品の弱さに繋がりかねない脆さを内包している,という印象を受けるが,白川の潔さに通じる間宮の脱ぎっぷりは,それを補って余りあるものだ。
毎週1作ずつ公開されるこのシリーズ,同様に6ヶ月連続で刊行されたスティーヴン・キングの「グリーン・マイル」を待つ心境を思い出して,この冬は少しだけ心も暖かい。
★★★
(★★★★★が最高)
リブートに合わせて昨秋,日活ロマンポルノを取り上げたNHKのドキュメンタリーが放送されたが,その中でスクリプターの白鳥あかねが,最初の作品「団地妻 昼下がりの情事」の試写を観たときの感想を「とにかくびっくりした。けれども,これからこういう作品を作っていくんだな,と腹を括った」と語っていた。それまで撮っていたアクションとはまったく異なるジャンルへの挑戦に,半ば怖じ気づきつつも,生き残っていくためには,何が何でもやり抜くという潔い覚悟が印象的だった。その記念すべき第1作に主演した白川和子も,「独立プロでやってきた人たちを代表して,メジャーに乗り込むという気持ちが強かった」と語っていたが,当時制作に関わった大勢の人々の,ものづくりに賭ける職人的な心持ちこそが,歴史に残る作品群を生み出す原動力であったことは間違いない。
その意味で,リブートに挑む精鋭たちにかかるプレッシャーも相当なものだろう。
第1作の行定勲は,芸術とビジネスの狭間で苦悩しつつも,女には不自由しないマイナーな映画監督を主人公に据えたが,オリジナル・シリーズの多くとは異なり,視点を男に固定することによって,新味を出そうとしていた。塩田明彦監督の第2弾「風に濡れた女」の主人公も,演劇界から身を引いて海の近くの掘っ立て小屋に暮らす生まれついてのドン・ファンの男。偶然出会った女(間宮夕貴)にまとわりつかれるが,次第に男の隠遁生活はその意志とは裏腹に,女によって徐々に侵食されていく。
滾るような心情,情念,欲望をまといながら前へ突き進んでいく女性の姿を描いて数多くの傑作を生んできたオリジナル・シリーズに比べると,物語の仕立てに「芸術」っぽさが目立ち,生活感の希薄さがそのまま作品の弱さに繋がりかねない脆さを内包している,という印象を受けるが,白川の潔さに通じる間宮の脱ぎっぷりは,それを補って余りあるものだ。
毎週1作ずつ公開されるこのシリーズ,同様に6ヶ月連続で刊行されたスティーヴン・キングの「グリーン・マイル」を待つ心境を思い出して,この冬は少しだけ心も暖かい。
★★★
(★★★★★が最高)
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