2022年J1リーグ第29節 札幌VS.磐田【4:0】

福森の２年振りとなる直接FKによる先制点。チームの実質的なエースである小柏の今季初得点を含む４点を奪って，なおかつクリーンシート。今季初の連勝。試合数は違えど，降格圏の16位とは勝ち点で６点のアヘッド。
結果だけ見れば文句なしの快勝といえる試合だが，不安は募る。横浜，川崎，広島等の上位チームとの対戦を多く残す日程においても安全圏とは言えない上に，何より監督の采配に疑問ばかりが残るからだ。

ここまで決定的なチャンスを数え切れないほど外し続けてきた興梠を先発に残し，前節で素晴らしい逆転ゴールを奪った青木をベンチに残すという先発メンバーの選考基準も謎だったが，問題は何をさておき選手交替のタイミングだ。
確かに連携が取れているとは言えない磐田守備陣を，珍しくスペースに縦のパスを出すことで崩した場面を多く創り出した攻撃陣の調子は良かった。特にエンジンがかかってきたガブリエル・シャビエルの鋭い動きと正確なパスは，終盤に来て大きなアドバンテージになりつつある。田中の攻撃参加も増えてきており，攻撃面での厚みと引き出しは増してきていると言えるだろう。

けれども後半，完全に足が止まって守りに入ってしまった時間帯に，指示やメンバー交代によって再起動することが出来なかったことは，これまでも何度も目にしてきた光景ではあったものの，何よりの不安材料だ。たとえ２点をリードしているとは言え，最初のスイッチは守りの強化というメッセージになってしまう深井ではなく，攻撃の選手であるべきだった。
残り４分という逃げ切りの時間帯に投入された３人の選手によってもたらされた攻撃のダイナミズムを見れば，もっと早く変化を導入すべきではなかったかという忸怩たる思いを抱いたサポーターは少なくなかったはずだ。信頼できる少数の仲間に頼り切ることでしか事態は打開できない，と信じ込んでいる頑迷な老人，という風にしか見えなくなってきているミシャを説得する勇気あるコーチがいない限り，このスリリングな状況は最終節まで続くだろう。

結果的に得点になった高嶺の高速クロスも小柏のシュートも，どちらもニアに強いボールを入れることで生まれた。逃げの折り返しではなく，角度のないところからでもシュートを，という指導が徹底されると共に，前節の立役者だった青木とスパチョークのモチベーションが下がらぬよう祈るのみだ。