子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2011年TVドラマ春シーズン・レビューNO.1:「グッドライフ」「幸せになろうよ」

2011年05月01日 17時44分58秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
「こども店長」加藤清史郎によって一躍スポットライトが当たり,芦田愛菜の衝撃的な登場でとどめを刺したと思われた「天才子役」というポジションに,ほんだしのCM「かつお武士」として修行を積んだ加部亜門が挑んだのが,フジの「グッドライフ」だ。
白血病に冒された加部と,やり手だが部下の気持ちも家庭も顧みない新聞記者の父親(反町隆史)との交流を中心に,そんな夫に愛想を付かして家を出た母親(井川遥)と父親との離婚問題や,子供たちに対する病院のケアの問題等を絡めて描いたドラマで,韓国で話題となったベストセラーを日本にアダプトした作品だ。

TV局としては,ファミリーカーのCMによって「良き父親」の代名詞ともなった反町のパブリック・イメージを最大限に活用して,主婦層の支持を得ようという作戦だったのだろう。しかし本家の出来はいざ知らず,翻訳されたフジ版のクオリティは,脚本,役者,演出全てがボーダーを大きく割り込んだものとなってしまった。
脚本の大島里美は過去に「リアル・クローズ」等を手掛けたということだが,構成はルーズで,交わされる会話のどこを捜してもリアリティの欠片すら感じられないのは致命的だ。

もともと決して「上手い役者」とは言えない反町隆史に振られた台詞も生硬で,このままでは「悩める父親」というドラマの核が骨抜きになってしまうのは時間の問題だろう。更に女性から涙を絞り取る役を充てられた加部は,おそらく子役モデルとしては及第点だったのかもしれないが,どう見ても役者は無理だ。台詞を覚えられて,可愛い,というのが子役選考の最低条件なのかもしれないが,冒頭に記したように既に我々は芦田愛菜という存在を知ってしまったのだ。加部には可哀相だが,最低限の「演技」ができない子役でも,ひたすら「可愛い」という理由で愛でて支持する視聴者が最早そう多くはないことは,いまだ二桁に届いていない視聴率が証明している。

「グッドライフ」のレヴェルから見ると,結婚相談所を舞台にしたラブ・コメディの新月9「幸せになろうよ」は,遙かにウェルメイドのドラマに見える。
終始ぼそぼそと呟く「薔薇のない花屋」での台詞回しが理解できなかった香取慎吾は,今回は台詞を普通に喋っているし,何より「グッドライフ」に比べて,会話にリズムがあるのが良い。黒木メイサと仲里依紗という旬の女優を二人並べて(同じ局の佳作「任侠ヘルパー」でのコンビ復活なのだが…),きちんと全身が映るショットを入れる演出も,役者を活かすことに徹していて心地良い。

今どきの婚活の本質的な問題は,相談所に登録しようという意志と決断を持ち得ない層にあると推測される以上,本ドラマが恋と笑いで包みながら非婚を社会問題として抉り出そうという意図はないと思われるが,ヴェテランの井上由美子には是非とも「連続ドラマとはこうやるのよ」と,後輩の大島里美を教え導くような作品にしていって貰いたい。


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