子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ブレードランナー2049」:スケールアップされた混沌と荒廃に浸る163分
リドリー・スコットの「ブレードランナー」は、人間と人造人間の対立と融和という正統派SFがそれまでに幾度も挑んできた物語に、パンクとエスニックの要素を持ち込むことで「ハードSF」というフィールドを軽々と飛び越えるような高い飛翔を記録した名作だ。
そこから始まったガジェットだらけのカオスに満ちた未来社会、というヴィジョンに新鮮さを持たせることが困難な時代に、カナダの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴがその続編に挑むというニュースを聞いた時には、期待感よりも「果たしてどんなテイストの作品を指向するのか?」という疑念の方が優っていたというのが正直なところだ。
公開当時から同作を支持してきたファンの中にも同様の不安を抱いていた方は多いのではないかと思うが、ヴィルヌーヴが取ったアプローチは、オリジナル作へのリスペクトをプラットホームにしつつ、親子の絆と過去への思慕をより重厚な語り口で物語る、というものだった。
巨大で殺伐とした建物が建ち並ぶロサンゼルスの上空を飛ぶ小さな飛行艇、広大な廃棄物処理場、街中のホログラフィー、コンピューターから流れ出る日本語、朽ち果てたホテル。旧型のレプリカントを追いかけるのもまたレプリカントである、という悲劇的な仕立てや人間に反逆するレプリカントの存在は、決して声高に強調されることなく、あくまで「ブレードランナー・サーガ」の世界観を構成する柱として機能することを求められているように見える。エルヴィス・プレスリーやマリリン・モンローのホログラフィーが明滅する巨大なラウンジで新旧のブレードランナー二人が相見えるシーンは、オリジナル作でのルトガー・ハウアーとハリソン・フォードのバトルに匹敵する、強い輝きを放っていた。
その一方で、あらゆるシーンに込められた思い入れは、時として過剰に感じられる部分もあった。K(ゴズリング)とデッカード(フォード)との邂逅は感動的である一方で,自分探しの葛藤と記憶を巡る模索が輻輳した結果の2時間43分という上映時間は、オリジナル作が担っていた「大作群のニッチで煌めく小品」的な良さを消す方向にしか機能していないように思えた。
ただ、「オリジナル作は観ていないけれども『ラ・ラ・ランド』でファンになったライアン・ゴズリング目当てにやってきた観客」は路頭に迷ってしまっても構わない、という物語自体には、オリジナル作のクリエイターたちが纏っていた「分かってくれる人はいるはず」という潔い姿勢に近いものがあった。その意味でも、正統な続編、と胸を張れる水準にはしっかりと到達している。たぶんコケるだろうけど。
★★★★
(★★★★★が最高)
そこから始まったガジェットだらけのカオスに満ちた未来社会、というヴィジョンに新鮮さを持たせることが困難な時代に、カナダの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴがその続編に挑むというニュースを聞いた時には、期待感よりも「果たしてどんなテイストの作品を指向するのか?」という疑念の方が優っていたというのが正直なところだ。
公開当時から同作を支持してきたファンの中にも同様の不安を抱いていた方は多いのではないかと思うが、ヴィルヌーヴが取ったアプローチは、オリジナル作へのリスペクトをプラットホームにしつつ、親子の絆と過去への思慕をより重厚な語り口で物語る、というものだった。
巨大で殺伐とした建物が建ち並ぶロサンゼルスの上空を飛ぶ小さな飛行艇、広大な廃棄物処理場、街中のホログラフィー、コンピューターから流れ出る日本語、朽ち果てたホテル。旧型のレプリカントを追いかけるのもまたレプリカントである、という悲劇的な仕立てや人間に反逆するレプリカントの存在は、決して声高に強調されることなく、あくまで「ブレードランナー・サーガ」の世界観を構成する柱として機能することを求められているように見える。エルヴィス・プレスリーやマリリン・モンローのホログラフィーが明滅する巨大なラウンジで新旧のブレードランナー二人が相見えるシーンは、オリジナル作でのルトガー・ハウアーとハリソン・フォードのバトルに匹敵する、強い輝きを放っていた。
その一方で、あらゆるシーンに込められた思い入れは、時として過剰に感じられる部分もあった。K(ゴズリング)とデッカード(フォード)との邂逅は感動的である一方で,自分探しの葛藤と記憶を巡る模索が輻輳した結果の2時間43分という上映時間は、オリジナル作が担っていた「大作群のニッチで煌めく小品」的な良さを消す方向にしか機能していないように思えた。
ただ、「オリジナル作は観ていないけれども『ラ・ラ・ランド』でファンになったライアン・ゴズリング目当てにやってきた観客」は路頭に迷ってしまっても構わない、という物語自体には、オリジナル作のクリエイターたちが纏っていた「分かってくれる人はいるはず」という潔い姿勢に近いものがあった。その意味でも、正統な続編、と胸を張れる水準にはしっかりと到達している。たぶんコケるだろうけど。
★★★★
(★★★★★が最高)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 2017年J1リー... | 映画「アトミ... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |