山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

水木沢、シダの影、時の流れ

2007-10-17 | めぐる季節と自然
行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
さまざまな出来事を経て、状況がすっかりもとに戻ったかのようにみえても、必ず何かが変わっているのです。ときには大きく変わっているのです。

雨がやめばもとのいい天気に戻っただけのようにみえても、地が固まっていたりします。

木曾・水木沢には3カ月前と同じ清冽な水が流れていました。樹齢500年を超えるようなヒノキやサワラが変わらずすっくと林立していました。
そこは何百年も同じ姿で静かにそこにありますが、そこを訪れる人は日々変わります。同じ人が訪れたとしても、その人の人生は毎日変わっていて、3カ月前に訪れた人と同じ人ではありません。

大木が生み出す何千、何万の種子から、今年も小さな芽生えがいくつも生まれたけれど、来年もそこにあるものは少なく、生き延びたものは少し大きくなり、そして新たな芽生えが生まれ、全体としてやはり何百年も変わらない姿を見せてくれています。

命を終えた無数の木の芽や芽を出さなかった種子はほかの生き物を養います。森の変わらずに見える年月の間に、無数の生き物を養っているのです。

コオロギの鳴き声もか細くなり、今年もまたストーブの季節が来ます。
去年と同じように秋が来て冬が来る。同じことを繰り返しているように見えるけれど、幼木は少し大きくなり、草は違う世代になり、土は少し豊かになり、大木は寿命を終える。少しずつ、あるいは大きく変わっている。
それがときには辛く、ときには嬉しい。
変わらずに変わる、そんな変化の中で、人と自然を抱き込みながら、時が流れていくのだと思います。

※写真は、水木沢の木に写るシダの影
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