松静自然 -太極拳導引が教えてくれるもの-

松静自然とは落ち着いた精神情緒とリラックスした身体の状態をいい、太極拳導引の基本要求でもあります。これがまた奥深く…

老いるとは?(NHK-SP「人体ミクロの大冒険」を視聴して-3-)

2014-06-05 | からだの風景-みる・さわる・かんじる-
いきものとしての最も重要な使命は
次代に命をつなぐことです。
これは細胞にとっての使命でもあるのです。

細胞は生殖可能な体を完成させることに
全力を注ぐのであって
その後の期間(20代以降)は
いわば余生であるというのです。
人の寿命が長くなればなるほど
細胞の余生も長くなります。
人が長生きを目指すためには
細胞にとって快適な余生を
どれだけ提供できるかってことなのかな。
そんなことを思いながら
シリーズの最終回をみていました。



免疫細胞の司令塔をつかさどるT細胞。
この細胞の衰えが招く免疫細胞の暴走が
老いに関係しているといいます。

体を守護する免疫細胞は2兆個といわれ
骨髄内のニッチでつくられます。
さらに胸腺内で厳しく選別されながら
T細胞として育成されます。
いわばT細胞は免疫細胞の精鋭。
T細胞はサイトカインと呼ばれる
指令書のようなものを用いて
(免疫細胞間での情報伝達を担っている)
免疫細胞を増殖させたり活性化させたりします。
そのはたらきぶりは
ホルモン作用に似ているともいわれています。
しかしホルモンは下垂体や甲状腺など
ホルモンを作り出す臓器がある限り
作り替えが可能ですが、
免疫システムを指揮するT細胞自体の産生は
思春期とともに胸腺が消滅することで
終了してしまいます。
増殖はおろか作り替えることもできない以上、
現状のT細胞でやりくりしながら
しのいでいくしかありません。

加齢とともにT細胞の能力が低下していくのは
避けられません。
やがて誤作動や暴走が起こるようになり、
免疫細胞が自らの体を攻撃したり
さまざまな不具合がでてくるようになります。
このような免疫細胞の衰えが
老年病や生活習慣病の原因と考えられています。


いきものとしては
胸腺が消失してしまうまでの間に
いかにして成熟した体をつくりあげられるか。
これにつきるけれど、
人の一生という観点では
さらに成長期以降の長い人生を
衰えゆくT細胞をやりくりしながら
なるべく穏やかに健やかに送るための過ごし方を
探っていくことになるのですね。

命の営みは後戻りできない一方通行です。
前人未到の高齢化社会は
いまだかつて経験したことのない事態に
遭遇し続けていくフロンティアなんですね。



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