それは感情の老化が、原因かもしれません。
心の平穏を保つための考え方を伝授します(構成=本誌編集部 )
☆8人に1人が「老人性うつ」に
日本が世界有数の長寿国であることは、みなさんもご存じでしょう。
2023年厚生労働省の「簡易生命表」によると、
日本人男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.14歳。
2050年には男性が84歳、女性が90歳を超えるとも予想されています。
一方で、内閣府が行った意識調査によると、
約7割の人が「自分や配偶者の健康や病気のことが不安」と回答している。
この2つの結果からわかるのは、寿命が延びて自由な時間が増えているのに、
有意義に使いこなせず、負の感情を抱えながら、過ごしている人が多いということ。
実際、65歳以上の高齢者の31.7%が、気分障害(うつ病、双極性障害など)で、
8人に1人が「老人性うつ」を患っているという報告があるほどです。
脳も、体と同じく老化します。
そのため若い頃より感情をコントロールするのが難しくなるのでしょう。
確かに、大切な人を見送ったり、年金だけでお金が足りるのかと考えたりすると、
気分が落ち込み、不安になるのもわかります。
食が細くなったり、体が動かなくなったりすると、
老いを感じてショックを受けることもあるでしょう。
けれど、こうした不安の原因のほとんどは、自分の中にあります。
ですから、物事の考え方や心の持ちようを変えるだけで、少しずつ解消できるのです。
☆60代以降は「頑張らない」生き方を
そもそも不安を増幅させることは、健康にもよい影響を及ぼしません。
びくびくした気持ちで暮らしていると
「コルチゾール」という悪玉ホルモンの分泌量が増え、免疫力が衰えるばかり。
加えて、ネガティブな心理状態は、姿勢や歩き方にも表れます。
イライラ、クヨクヨしているときは、自然とうつむきがちに。
逆に、生活が充実していると目線が上がり、背筋もピンと伸びているものです。
背骨の周辺には、心身の活動をコントロールする神経が
無数に張り巡らされているため、猫背が続くとさまざまな健康被害が出かねません。
とくに自律神経の働きが悪くなると、
倦怠感や不眠、頭痛、下痢、イライラなどの症状に悩まされることがあるのです。
こうした負のスパイラルを招かないためにも、
60代以降は「頑張らない」、「無理をしない」生き方が望ましいと私は思っています。
次の記事からは具体的に、どのように対応していけばいいのか、
ご紹介していきましょう。
☆「老後うつ」の危険度テスト
当てはまるものにチェックを入れてください。
□ 最近、やる気がまったく起こらない
□ やるべきことがたくさんあり、気持ちが切羽詰まっている
□ 理由もなく不安感にさいなまれる
□ 人に会いたくない
□ 前は楽しかったことが楽しめなくなっている
□ すぐカッとするようになった
□ イライラすることが多くなった
□ 物事を悪いほう悪いほうへと考えてしまう
□ 最近、声を出して笑ったことがない
□ 毎日が楽しくない
□ 最近、頭痛が起こることが多くなった
□ このところ明らかに食欲が落ちている
□ 下痢が続いている
□ 夫(親しい人)に暴言を吐いた
□ 朝、起きるのがつらくなった
□ 最近、声が聞きとりにくいとよく言われる
□ ものや人への興味や関心がなくなった
□ 以前より疲れやすくなった
□ 落ち込むことが多くなった
□ 涙もろくなった
□ 仕事や家事に、以前ほど集中できなくなった
□ 「この世から消えてしまいたい」と思うことがある
□ 「自分には生きている価値がない」と感じてしまうことがある
□ 失敗したことを気に病むことが多くなった
□ 「~すべきだ」「ねばならない」にこだわるタイプだ
□ 以前より睡眠が浅くなった
チェックの数が10個以上で、それが頻繁に起こるようになったら要注意。
また、7個以上当てはまり、それが2週間以上続く場合は、一度専門医を受診しましょう
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。