私は東京の調布市に住む年金生活の73歳の身であるが、
私たち夫婦は子供に恵まれなかったので、我が家は家内とたった2人だけの家庭である。
そして雑木の多い小庭の中で、古ぼけた一軒屋に住み、
私たち夫婦はお互いに厚生年金、そしてわずかながらの企業年金を頂だいた上、
程ほどの貯金を取り崩して、ささやかな年金生活を過ごして、早や14年目となっている。
私は幼年期に農家の児として育てられた為か、父の妹である叔母が未婚当時に畑の一角に、花壇を作り、
仏様とかお墓にささげる花を見たりしてきたので、里花には愛惜を秘めているひとりである。
或いは田圃(たんぼ)とか遊歩道の片隅に咲いている野花も恋しく、長年に見惚(みと)れたりしている。
そして家内は中学生の頃から茶事を習ってきたので、私は婚約の頃から茶花を教えられて、
魅了されたりしてきた・・。
このように里花、野花、茶花に関しては、少しばかり知っているが、洋花に関しては、殆ど無知な男である。
こうした中で、薔薇(バラ)の花に関しては、何かしら気品のある女性が高価なドレスを召したような、
或いは裕福な家庭で育っている高嶺の花のような女性と感じたり、
私は定年退職した60歳の頃まで、近寄りがたく気後(きおく)れしまい敬遠してきた・・。
そして何かと卑屈と劣等感を秘めてきた私でも、遅ればせながらイギリス、フランスなどの文化を知る為には、
やはり薔薇(バラ)は欠かせない、と確信を深めたりした。
やがて年金生活の60代に国内旅行で『バラ園』があった時、鑑賞する時もあったりし、
私の住む地域の都立『神代植物公園』に於いて、恒例の『春のバラフェスタ 』、『秋のバラフェスタ 』などで、
数多くの美麗な薔薇(バラ)を鑑賞して、感性の衰えた私でも、魅了された。
こうした心情を秘めてきた私は、今年も恒例の『春のバラフェスタ 』が開催されていると知ったりした。
昨日、私は前夜の天気情報に於いて、明日の10日は、相変わらず三月下旬のような寒さですが、
午前9時頃まで曇りですが、この後は急速に回復して快晴の日となります・・と報じていたので、
私は神代植物公園に行き、恒例の『春のバラフェスタ 』を鑑賞しょう思い、朝の9時過ぎに出かけた。
そして私は最寄り駅のひとつ京王線の『つつじが丘』駅に向かい、15分ばかり歩いた後、
駅前より路線バスに乗車して、やがて神代植物公園の正門前に到着した。
どんよりとした曇り空の中、入園すると、雨がポッリ・・ポッリ・・と降りだしてきた。
私はどうしてなのょ、と思いながらバックから折りたたみ傘をだして、
傘を左手に差しながら、小雨となった中を歩いたりした。
そしてバラ園に着いたが、幾百の多彩なバラにめぐり逢えたが、
私はデジカメで美麗なバラを撮るには、困ったなぁ・・と感じたりした。
私は1キロ近いデジカメ本体は、首にデジカメ用のストラップをネクタイのように提げて、
こうした中で、魅了された情景を両手でデジカメ本体を握って、撮っている習性となっている。
今回は、雨降る中、左手は傘を差し、右手だけでデジカメ本体を操作を始めたが、
やはり少し重さを感じて、やむなく傘を差してしる左手で、デジカメ本体の一部を支えたりした。
こうした結果、フィールド・ジャケットの一部は濡れたりした。
或いは、バラを撮るために、ときおりしゃがんで、撮ったりすると、長ズボンは濡れたりした。
こうした中、遠雷の音が聞こえ、まもなく本降りとなった・・。
私は神代植物公園には、ここ10年に於いて少なくとも24節季のように幾百回ぐらい、
園内を遊学してきたが、本降りの雨の中は初めてであり、戸惑ったりした。
しかしながら本降りの雨の中のバラも、美麗だよねぇ、と単細胞の私は撮り続けた。
やがて2時間近く撮った後、雑木林を歩いた後、神代植物公園を辞したりした。
この後、自宅で一時間過ぎた午後2時頃、雨はやみ、急速に天気は回復して、
晴れ間となった・・。
こうした予期せぬ天気のうつろいに、この人生にも色々あったからねぇ・・
と心の中で思いながら、私は独り微苦笑を重ねたりした。