「君たちに憎しみという贈り物はあげない」――。パリ同時多発テロで妻を亡くした仏人ジャーナリストのアントワーヌ・レリスさん(34)が、テロリストに向けてつづったフェイスブック上の文章に、共感が広がっているという(詳細は、朝日新聞のココから)。
レリスさんは「私と息子は2人になった。でも世界中の軍隊よりも強い。そして君たちのために割く時間はこれ以上ない。昼寝から目覚めたメルビルのところに行かなければいけない。彼は生後17カ月で、いつものようにおやつを食べ、私たちはいつものように遊ぶ。そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう」とface bookに綴っているという。
私は、この朝日の記事を読んで、松本サリン事件の第一発見者となった河野義行さんのことを思い出した。松本義行さんは奥さんもサリンで重体になる犠牲者だったにも拘わらず、警察からも報道からも犯人扱いされた。そんな2重に酷い目にあった河野さんが、サリンの加害者だった人が出所し詫びにきた時に拒むことなく受け入れ、その後も交流している話をテレビで放映していたのをみた。「赦し」、どうして河野さんは、加害者を憎まずに許せたのかと不思議に思った。松本さんの答えは(憎しみ続けていては、私たちの人生が暗く楽しいものでなくなる。それでは本当に不幸になってしまう)というものだった。
今回、フランス人のテロの犠牲者であるレリスさんの言葉も河野さんと共通している。「幼い子供と自分と、幸せで自由であり続ける」という彼の言葉は、自分の幸せを彼らに奪われないために、憎しみではなく、幸せに(愛に)生きるという選択だ。
憎しみに憎しみで応え、戦闘態勢を強化してさらに憎しみの連鎖を生もうとする愚を指導者たちは考えてほしい。
強化した攻撃にさらされるのはテロリストだけではないのだから。その爆弾の下には19日の日記で書いたように、ナビラさんの家族のような民間人や人々を救おうと働いている医師達もいるのだ。
サリン事件の松本さんの話を知らない方のために、どこかによいサイトはないかと探していたら、釧路の「山形牧師のサイト」に出会った。2007年に刑務所で宗教教誨師の任に当たる宗教家を対象とした講演会で河野さんが話したことを中心に、これまで私も知らなかった河野さんの支えになった人々の話も書かれていた。
人間が、人間としてあるために、物事をどのように考えたらよいのか、素晴らしいヒントがそこにはある。
是非とも、レリスさんと河野さんの話に耳を傾けてみよう。
憎しみでは、憎しみを終わらせることはできない。幸せに向かう方程式のカギは<赦し>なのだ。そして、それはきれいごとからでない。
1度の人生を幸せに、愛する大切な家族と生きようとする強い決意が、憎しみを乗り越える力となっているのだ。
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