最近、「CO2出ない火を作る」という衝撃的なフレーズのCMをテレビで数回みて、私は驚きました。みなさんも、気づきましたか?
広告主は「JERO」という聞き慣れない名前です。何だろう?と気持ち悪く思えました。「2050年 CO2排出ゼロに挑戦」の言葉も、ウソっぽい。思わせぶりで、どうやって実現するのかもハッキリ分かりません。
すると、私が皆様にお薦めしている東京新聞が10月6日の新聞に次のような記事を大きく掲載して、様子が判明しました。
上のタイトルをクリックすると、東京新聞を購読してない人でもネットで記事が全文読めます。
<Jeraとは、東京電力と中部電力が出資して設立した会社であること。 このCMが、海外では規制が進んでいる「グリーンウォッシュ」(環境への配慮を謳いながら、実態を伴わない問題を孕むCM)であるとして、NPO法人「気候ネットワーク」という環境団体が、日本広告機構(JARO)に、CMの放送中止の申し立てをしたこと>が記事を読んでわかりました。
この記事になった環境団体の「気候ネットワーク」は、ゴールドマン環境賞受賞・平田仁子さんが属していたNPO法人として、以前いくつかの新聞が大きく取り上げたので、私も知っていました。すごい人がいるな~と思い、実は、Zoomでお話を聞いたこともありました。
米国の環境NGOで学び、帰国後NPO法人「気候ネットワーク」の創設スタッフとなり、今回のプレスリリースを行った代表・浅岡 美恵と共に 脱炭素社会実現のために、情報提供や政策提言を23年続けてきたと話していました。
そして、平田さんたちは、提言するだけでなく、問題になる地域に出向いて仲間を集めて会社に訴えたり、様々な活動を地道に続け、遂には千葉県では、毎年約2400万トン(一般家庭約600万世帯相当)の炭素排出が見込まれた石炭発電所計画が全て撤回させ、全国では、17基の石炭発電所建設計画を撤回に導いたのです。「気候ネットワーク」は、非常に実現力、実行力のある注目すべきNPO法人なのです。
今回の浅岡代表のプレスリリースが、下のロゴをクリックすると、直接見ることができます。
ベンジャミン・フランタ博士(オックスフォード大学)のコメント(仮訳)
『CO2が出ない火』を謳うJERAの広告は、誤解を招きかねません。火力発電所は、化石燃料を直接的・間接的に使用する限り、地中に貯留されていた炭素を大気中に放出することになるため、『CO2が出ない』とは言えず、水素やアンモニアを燃料としたにしても、化石燃料を使って製造する限り、『CO2が出ない』とは言えません。よって、JERAの広告は、化石燃料を使用する同社の火力発電所からは『CO2が出ない』と消費者に誤解を与える可能性があります。
ベンジャミン・フランタ博士(Benjamin Franta, JD, PhD)
と、権威ある博士のコメントも、プレスリリースに添えられていました。
EV車の宣伝を見る度に、EV車が「CO2ゼロ排出」と言われても、そのEV車が石炭や石油など化石燃料由来の電気を使っていれば意味がない!とこれまでも苦苦しく思っていた私。 まさに、水素やアンモニア燃料による「CO2ゼロ排出」は消費者に誤解を与えて、『CO2が出ない火』はまやかしだっ!と、この宣伝を見た時から、気持ち悪い宣伝と思えたのでした。
詳細を読んで頂ければ分かりますが、この広告の問題は、しかも石炭火力でアンモニアを混焼するものであること、及びアンモニア製造などの過程で大量のCO2を排出することが告げられていないことだけに留まりません。さらに2030年に20%混焼されても残り80%は石炭を使っており、1.5℃目標の実現に求められる2030年の排出削減と整合していないことが大問題なのです。
石炭火力をさらに使い続けるこんなやり方では、「気候ネットワーク」が多くの市民を巻き込んで、全国で17基の石炭発電所建設計画を撤回に導いた意味が失われてしまい、まさに「再生可能エネルギーへの動きに逆行」していると言えます。
この、まだ不確かな技術に肩入れしている政府。2030年の目標も危うくする石炭火力の温存、優遇。おかしくないですか?2023年6月に出された経産省の「今後のエネルギー政策」をココでみると、こんな石炭火力への逆行が見てとれます
水素やアンモニア燃料による「CO2ゼロ排出」(右側)の実現のために石炭火力を進めていくのが政府のやり方でもあるのです。
そして、その一方で、間違ったエネルギー政策の上塗り「原発の再稼働・新設」。トイレのないマンションと言われ、自然災害にも脆弱さを露呈した「原発の推進」が進められているのです。CO2排出がゼロでも、多くの人々の故郷を奪った「クリーンエネルギー」とは真反対の原発の再稼働!を進める政府。国民の命と財産をどう思っているのでしょう。
日本のエネルギー政策は、迷走しています。投資をするべき先を根本的に間違っています。こんな政策を進めて、老朽原発が再稼働されたそばで、あなたは本当に安心して暮らせますか?しかも、核ゴミの安全な捨て方も、引き取り地域も確定できないでいるのに?
オレオレ詐欺も、出資金詐欺も、犯罪に繋がる高額バイトも、しらない間に私たちにそれらしい言葉で近づいてくる世の中です。テレビで堂々と宣伝しているからと、信用がおけるかなんて分かりません。国の行った2万円クーポンのマイナンバーカードも、「お得」で吊って拙速に加入を強行したため、個人情報が漏れたり大問題となりました。
ふるさと納税も、仲介業者にも利益がいき、自分たちの住む地域の地方税収入を減らす結果になっていることを忘れてテレビのCMに踊らされていいものか、注意が必要です。
また、ジャニさんの性加害を伏せていたように、このような宣伝を含め、EV車が増えればそれでCO2がゼロになるわけでなくEV車が使う電気の由来が化石燃料では意味がないこと、大事なこれらの問題が、どれほどマスコミで流されていたでしょうか。あなたの読んでいる新聞は、この問題をちゃんと大きく伝えていますか?
ネット調べると、東京新聞、毎日新聞、朝日新聞は報道したようですが・・・最初に伝えた「CO2が出ない火力」のCMの問題、あなたの読んでいる新聞には書いてありましたか?
報道には、伝える記事の「選択」、「扱いの大きさ」で、読者に与える情報のインパクトが全然違います!あなたの毎日読んでいる新聞が、サービス品がいくらよくても、必要な情報をあなたにしっかり届けていなかったら、その新聞を取る意味はないのでは?
値段は東京新聞が安いし今、私のイチオシになっていることは、「東京新聞を応援」のカテゴリーまで作ってしまったほどです。「#新聞比較」で大事な時には、数紙の記事で比較して、皆さんの読んでいる新聞を他の新聞とどう違うかわかるヒントをご提供しています。参考にしてみて下さい。
そして、テレビで流れている「CO2が出ない火」なんて言葉に一緒に夢をみている場合ではない現実を、しっかり直視しましょう。そうでないと、日本はますます世界のCO2削減の潮流から遅れてしまいます。
とはいえ、ウクライナ戦争、今度はイスラエル・ハマスとの紛争再燃、人間が武器で同じ人間と殺し合い、兵器を消費していくのでは、CO2削減も、SDGsのゴールへの到達も遠のくばかりの様子。世界が分断と破滅に向かっているように私には思えます。平和憲法の前文にあるように、日本が世界を理想に近づける力を発揮する時代にしないといけない時に、日本が「原発だ、石炭火力だ~」と後ろばかり見ているのでは、話になりません。