14日、佐世保工の応援に佐世保球場へ出かけた。
球場へ着くと、スタンドが沸いていた。第1試合目の波佐見対西陵戦が終盤を迎えている頃だ。
球場の外では佐世保工の選手たちが体をほぐしている。豊村君が1年生の時、新入部員は36名を数えたとか。佐世保工は、甲子園出場春夏通算7度を誇る古豪名門校だ。何しろ部員が多い。
豊村君・山村君の顔を見ることができるかなと、それとなく球場の外を歩くと、すれ違う佐世保工の選手たちが次々に大きな声で「こんにちは!」と挨拶してくれる。よく鍛えられているのだろう。気持ちがいい。それに一つ一つ応えながら1塁側スタンドの切れ目まできた。
そこからちょうどバックスクリーン上のスコアボードが見えるのだが、得点を確認して驚いた。何と、春のセンバツ出場で今大会の第1シード校でもある波佐見が7回途中まで1対4とノーシードの西陵にリードを許しているのだ。
意外な試合展開に惹かれ、球場の入り口に向かった。途中、山村君が私を認め声をかけてくれた。短く言葉を交わし、受付でチケットを購入し、東日本大震災の募金に応じ、階段を上がってスタンドに出てこれまた驚いた。1塁側・波佐見のスタンド、3塁側・西陵のスタンド共にブラスバンドの入った大応援団が応援合戦を繰り広げているではないか。両校とも決勝戦のような力の入れようだ。
結局、試合は9回にも得点を挙げた西陵が5対1で優勝候補筆頭の波佐見を降した。
1試合目の波乱の余韻が残る中、佐世保工のシートノックが始まった。統制のとれたシートノックが伝統校の風格を感じさせる。
間もなく試合開始だ。1回の表、守備についた佐世保工のマウンドには背番号1をつけたエースの豊村一学君が登った。
1試合目は大観衆の中、バックネット裏の上段で観戦したが、第2試合目に入るとずいぶんと観衆が減った。応援の声も、3塁側内野スタンドの一角に陣取った佐世保工野球部のものだけとなる。
一学君がどんなボールを投じるのかじっくり見たくて、マウンドとホームベースを結ぶ直線の延長線上のバックネット真裏の最前席に移動した。
いよいよ球審のプレーボールの声がかかり、一学君の投じた2球目か3球目を先頭打者が叩いた。打球は平凡なセカンドゴロだ。よし、先ずワンアウトと思った瞬間、ボールは2塁手の股間を抜けていた。やはり、緊張しているのだ。
いきなりノーアウトのランナーを背負った一学君だったが、彼は落ち着いていた。一学君は幼い頃から穏やかだった。決して激高するようなことなどなかった。いつもニコニコとして平静でいられた。そんな彼の持って生まれたものが、投手として生かされているのだろう。
結局、一学君は初回のピンチも後続を断ち、その後もストレート・スライダー・シュート・シンカー・チェンジアップなどを巧みに投げ分け、打線も序盤に先発投手を打ちあぐんだものの、4回途中で先発投手をマウンドから引きずり落とした後は一気に打線が爆発し10対0、6回コールド勝ちした。
それにしても一学君の落ち着いたマウンドさばきには感心した。
私の席の周囲には次の対戦相手の長崎商業の野球部員が4,5人陣取り、一学君のピッチングをビデオに収めながら、あれこれ分析していた。それほどの投手なのだ。
今後の彼のピッチングが益々楽しみになってきた。